【こんな症例も治りますシリーズ 578】 猫の『 高齢の黄疸・十二指腸炎を伴う膵炎 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、猫の十二指腸、膵臓膵管、胆嚢胆管の位置を示しています。

■ 上の3つの臓器がかなり近接しているので、『長屋の火事』という表現で言われますが、膵臓が炎症を持つと、胆管や十二指腸の炎症が起こりやすいです。

★ 犬とは異なり、猫の大部分 (80%) は膵管を 1 本しか持っていません。

★ 上のイラストは、副膵管があるように書いてありますが、20%の猫にはあるようです。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3Jg7B9u

 

猫 ミックス猫 15歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 2日前から食欲無く、今朝吐いた 】とのことで来院されました。

 

 

◆◆ 血液検査、レントゲン検査およびエコー検査をさせていただきました。

 

 

■ 血液化学検査と特殊血液検査の結果、膵炎を示す数値が上昇していました。 また肝機能の数値と、黄疸を示すビリルビン値が上昇していました。 またエコー検査でも膵炎を疑う所見が得られました。

 

 

■ 胃から続く十二指腸には、膵臓から膵液を流す膵管と、肝臓から胆汁を流す胆管という二つの管がつながっています。

 

 

■ 胃から流れてきた食べ物を十二指腸の中で膵液や胆汁と混ぜることで、消化して腸から栄養を吸収しています。

 

 

■ このため、十二指腸と膵臓と肝臓は密接な関係にあります。

 

 

 

■ ワンちゃんは膵管と胆管が別々に十二指腸につながります。 一方、ネコちゃんは膵管と胆管が『Yの字状に』合流した後に十二指腸につながるので、ネコちゃんが小腸(特に十二指腸)で炎症を起こしたり、膵炎になるとその炎症が肝臓にも広がって、三臓器炎という重い病気になってしまう事が多いと考えられています。

 

 

■ 今回のネコちゃんも三臓器炎を発症し、膵炎と同時に胆管炎になってしまい、黄疸や肝障害を併発していたものと考えられました。

 

 

■ 治療はまず入院していただき、点滴を続けながら、当院のブログでも度々登場している膵炎の特効薬を使わせて頂きました。

 

 

 

■ また胆管炎(三臓器炎)の治療として、ステロイド、胆管を拡張させるお薬等を合わせて使わせていただき、2日後には肝機能、黄疸の時に上昇するビリルビン値も低下し始め、食欲も出てきました。

 

 

■ そして5日後にはすっかり元気を取り戻し、退院しました。

 

 

■ 現在は、ドイツ自然医学療法も取り入れて、三臓器炎の再発予防に定期的に通院されています。

 

 

 

獣医師 天野雄策

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