【こんな症例も治りますシリーズ 871】『 セカンドオピニオン診療 : ワンちゃんの鼻血が止まらない 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、犬の顔の断面CT画像です。

◆ 向かって右側の縦長部分に、左側は黒いが、右側が灰色の不対称な部分があります。

◆ ここの灰色の部分が、鼻の中の腫瘍部分です。

 

 

 

 

犬 ラブラドール・レトリーバー 8歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 鼻からの出血が止まらない 】で来院されたワンちゃんです。

 

 

◆◆ 飼主様は、他院で治療しても止まらない鼻血が、最大の悩みとの事でした。

 

 

◆◆ 鼻炎の治療をしても止まらない鼻血

 

■ 最初は他院を受診され、『 鼻炎 』と診断されて、抗生剤(細菌をやっつけるお薬)による治療が行われていました。

 

■ しかし、他院の治療を続けても鼻血は改善しませんでした。

 

 

 

■■ ワンちゃんの鼻血は、鼻炎や感染症、異物(鼻の中に入り込んだ植物のノギなど)といった、比較的身近な病気でも起こります。

 

 

■■ 一方で、治療を行っているにもかかわらず改善しない場合には、『 鼻腔内腫瘍(びくうないしゅよう = 鼻の中にできた「できもの」) 』などの、より重い病気も考える必要があります。

 

 

 

 

◆◆ 画像検査で『 骨の融解 』を確認

 

 

■ 当院で改めて画像検査(レントゲン検査)を行ったところ、次の2つの所見が認められました。

 

・ 鼻腔(びくう = 鼻の中の空洞)の中に、異常な影がある

・ 鼻腔のまわりの骨に『 融解像(ゆうかいぞう = 骨が溶けて壊されている像) 』がある

 

■ これは、単純な鼻炎だけでは説明しにくい所見であり、鼻腔内腫瘍の可能性が高いと考えました。

■ そこで、より詳しく病変の範囲を確認するため、CT検査を実施しました。

 

 

 

 

◆◆ CT検査で病変の広がりを確認

 

■ CT検査(からだを輪切りにするように撮影して、細かく見ることのできる精密な画像検査)では、次のことが分かりました。

 

・ 鼻腔の中に、腫瘤(しゅりゅう = かたまり・しこり)性の病変が認められる

・ まわりの骨の構造にも、明らかな変化が確認される

・ 病変は鼻腔の奥にまで及び、画像上は『 篩板(しばん) 』の付近まで進展している可能性がある

 

 

■ 篩板とは、鼻腔と頭蓋腔(とうがいくう = 脳が入っている空間)を隔てている、薄い骨の板です。

 

 

■■ この部位まで病変が進んでいる場合には、脳への浸潤(しんじゅん = がんが浸み込むように広がっていくこと)についても注意が必要になります。

 

 

 

■■ このように鼻腔内腫瘍では、『 腫瘍があるかどうか 』だけでなく、『 どこまで病変が広がっているのか 』を評価することが、非常に重要になります。

 

 

 

 

◆◆ 鼻腔内生検を実施

 

■ CT検査で腫瘍が強く疑われたため、確定診断を目的として『 鼻腔内生検(せいけん = 鼻の中の病変の組織を、一部だけ採ってくる検査) 』を実施しました。

 

■■ 病理組織検査(採ってきた組織を顕微鏡で詳しく調べる検査)の結果、『 扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん) 』と診断されました。

 

■ 扁平上皮癌とは、皮膚や粘膜の表面をおおっている細胞から発生する、悪性の腫瘍(= がん)です。

 

■ これにより、これまで『 鼻炎 』と考えられていた鼻血の原因が、鼻腔内に発生した悪性腫瘍によるものだということが分かりました。

 

 

 

 

◆◆ CT検査によって、治療方針も変わります

 

 

■ 今回のCT検査では、腫瘍そのものを確認するだけでなく、まわりへの浸潤範囲まで評価することができました。

 

 

■ 特に、篩板の付近まで病変が進展している可能性があり、外科手術で完全に切除することは難しいと判断しました。

 

 

 

■■ 鼻腔内腫瘍では、腫瘍の種類だけでなく、腫瘍がどこまで広がっているのかによって、治療方針が大きく変わります。

 

 

 

■■ そのため、鼻腔内腫瘍が疑われる場合には、『 CT検査による病変の評価 』と『 組織検査による確定診断 』を組み合わせることが重要です。

 

 

 

 

◆◆ 今後について

 

■ 今回の症例では、手術による根治的な治療(= 完全に治しきる治療)は難しいと判断されました。

 

■ しかし、原因が分からないまま治療を続けるのではなく、CT検査と鼻腔内生検を行ったことで、次の2点を飼い主様にきちんとご説明することができました。

 

・ 鼻血の原因が『 扁平上皮癌 』であること

・ 病変が、どの程度まで進行している可能性があるのか

 

■ 飼い主様も、検査結果についてご理解・ご納得された様子でした。

 

 

 

■■ 現在は、オゾン治療(オゾンを体に作用させて、免疫のはたらきや血のめぐりを整える治療)などを含めた緩和的な治療(がんそのものを治すのではなく、つらい症状をやわらげて生活の質を保つ治療)を行いながら、できるだけ生活の質を維持できるよう治療を続けています。

 

 

 

■■ 現在のところ、普段どおりの生活もできている様子です。

 

 

 

■ 鼻血という、一見すると【 鼻炎かな 】と思ってしまう症状でも、長期間続く場合や、治療に反応しない場合には、鼻腔内腫瘍などを考慮する必要があります。

 

 

 

■ 今回の症例でも、画像検査と組織検査を行うことで、病気の原因と進行度を把握することができました。

 

 

 

■ 今後も状態の変化をしっかりと確認しながら、少しでも快適に過ごせるよう、経過をみていきたいと思います。

 

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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