【院長ブログ:新シリーズ】 動物の高齢化社会 健康長寿で一生を プロの目で支援します

 

 

『 もっと早く気づいてあげたかった 』

 

― その言葉を、これ以上聞きたくないのです

 

『 まだ元気だから大丈夫 』が変わる、新・予防医療という考え方

 

 

 

◆◆ はじめに ― 結論から申し上げます

 

 

元気に見える子ほど、実は調べる価値があります。

 

 

 

◆ ある研究(ベルギーの大学が発表元)を簡単に紹介します。

 

飼主様が『うちの子は健康です』と考えていた高齢の犬122頭を、しっかりと健康診断した研究があります。

 

その結果、5頭に1頭(20%)から、まだ誰も気づいていなかった病気が見つかりました。

 

この20%という数字は、私たち獣医師にとっても重い数字です。 そしてこれは、飼主様の観察力が足りなかったという意味では、まったくありません。

 

元気に見えることと、健康であることは、同じではありません。

 

 

 

◆ だからこそ当院は、『 病気になってから治す医療 』から、

『 一生を通じて、ご家族と一緒に併走し続ける医療 』へと考え方を変えました。

 

 

 

# もちろん、現在も『 通常の病気を治す医療 』は行っておりますが、

 

それに『 従来の予防医療ではない、体質改善などの新・予防医療 』を加えることで

 

 ⇒ 『 一生を通じて、ご家族と一緒に併走し続ける医療 』と考え方をステージアップするという意味です。

 

 

 

 

●●● ≪ 今日はその理由を、正直にお話しさせてください。 ≫

 

 

 

◆◆ 診察室で、いちばん多く聞いてきた言葉

 

開業以来、私は数えきれないほどの子とご家族に出会ってきました。

 

そして診察室で、同じ言葉を何百回と聞いてきました。

 

「 もっと早く気づいてあげられたら 」

 

 

 

◆ 進行したがんが見つかったとき。 腎臓の機能が半分以下になっていたとき。 心臓が限界を迎えていたとき。 飼主様は必ず、ご自分を責められます。

 

ですが、そのたびに私は思うのです。

 

この後悔は、本当にこの方のものなのだろうか、と。

 

 

 

◆◆ それは、飼主様の落ち度ではありません

 

 

 

■■ 理由①  犬も猫も、つらさを隠してしまう動物です

 

野生で暮らしていた時代、弱った姿を見せることは、そのまま命の危険につながりました。

 

その名残で、犬も猫も、体調が悪くても平気なふりをします。

 

ごはんを食べ、しっぽを振り、いつも通りに歩きます。

 

つまり『 食べている・元気そう 』というサインは、残念ながら健康の証明にはならないのです。

 

 

 

■■ 理由② 血液検査の数字も、かなり遅れて動きます

 

腎臓を例にします。

 

以前から使われているクレアチニンという数値は、腎臓の働きが最大で75%失われるまで、正常のままです。

 

一方、近年使えるようになったSDMAという数値は、平均40%、早い場合は25%の腎臓機能低下で異常を示します。

 

同じ「血液検査」でも、見えるタイミングがまったく違うのです。

 

逆に言えば、昔ながらの検査項目だけを見ていると、数字が動いたときには病気はすでに後半戦、ということが起こり得ます。

 

 

 

◆◆ 「元気に見える」高齢の子を、本気で調べるとどうなるか

 

冒頭でご紹介した研究(ベルギー・ゲント大学、2025年発表)の結果を、もう少し詳しくお伝えします。

 

1) 飼主様が健康だと考えていた高齢犬122頭のうち、20%に未発見の病気が見つかった

 

 

2) さらに『健康』と確認された98頭を2年間追いかけると、

 

悪性腫瘍が12%、

慢性腎臓病が12%、

神経の病気が11%に 新たに見つかった

 

 

3) 見つかった悪性腫瘍の47%、

つまり約半分は、皮膚・乳腺・お尻まわりを丁寧に触る

『 獣医師の身体検査 』だけで発見できていた

 

 

最後の項目は、特にお伝えしたい点です。

 

特別な機械がなくても、定期的に獣医師の手で全身を触るだけで、がんの約半分は拾い上げられるということです。

 

 

 

そして残りの半分のために、画像診断があります。

 

当院がCTセンターを併設しているのは、この『 触っても分からない領域 』を見に行くためです。

 

 

 

◆◆  犬と猫の時間は、私たちよりずっと速く流れます

 

犬も猫も、1歳を過ぎたあとは、1年でおよそ人間の4〜5年間分の年をとります(体の大きさによって速さが変わります)。

 

1年に1回の健康診断は、人間でいえば『4〜5年に1回しか診てもらわない』のと同じ時間感覚です。

 

人間の私たちであれば、5年ぶりの健康診断で何も出ないほうが幸運、と考えるのではないでしょうか。

 

こうした理由から、米国動物病院協会(AAHA)は、年齢を問わず6〜12か月ごとの受診を推奨しています。

シニア期に入った子であれば、3カ月~半年に一度が理想です。

 

 

 

 

◆◆ だから当院は、医療の姿勢そのものを変えました

 

動物医療は長いあいだ、『 具合が悪くなったら行く場所 』でした。私自身も、その中で診療をしてきました。

 

しかし、それを続けるかぎり、飼主様の後悔は減りません。

 

今までは、『 医療の側が待っているだけです 』から、当然です。

 

そこで当院は、獣医師とご家族が一緒に、その子の一生に寄り添う『 生涯伴走型の医療 』を掲げることにしました。 柱は三つです。

 

 

 

■■ 備える

 

元気なうちに、その子だけの「平常値」を記録しておきます。血液検査、画像、体重、歩き方。

 

基準は世の中の平均値ではなく、その子自身の値です。 

 

 

 

■■ 守る

 

平常値があるからこそ、わずかな変化に気づけます。

 

数値が動き始めた段階、症状が出る前の段階で手を打ちます。

 

ここが、いちばん効果の出る場所です。

 

 

この守る時間帯からは、『 効果的なエイジングケア 』をお勧めしています。

 

 

 

■■ 支える

 

 

それでも病気が進むことはあります。

そのときは、治すことだけを目的にせず、その子の生活の質(QOL)を軸に、統合医療も含めた選択肢をご家族と一緒に選んでいきます。

 

 

 

この三つは、どれかを選ぶものではありません。

年齢と状態に合わせて、配分を変えていくものです。

その配分を一緒に決めていくことが、伴走するということだと考えています。

 

 

◆◆ 目指しているのは、ただ長生きすることではありません

 

私たちが目指しているのは、『 最期まで元気 』です。

 

寝たきりで一年長く生きることではなく、その子らしく歩き、その子らしく食べ、ご家族の顔を見て過ごせる時間を、一日でも長くすること。

 

そのために、予防・ケア・治療を組み合わせていきます。

 

 

 

備える・守る・支える ⇒ その子らしく生きる時間を、最大限に。

 

 

 

 

◆◆ 最後に ― 今日できること

 

難しいことをお願いするつもりはありません。まずは、次の三つだけで十分です。

 

・ 7歳を過ぎたら、健康診断を年1回から半年に1回へ変える、そして10歳を越えたら3カ月に1回へ変えましょう。 大型犬の場合、短命ですので5歳から定期健診の頻度をアップしましょう。

 

・ 血液検査の項目に、腎臓の早期指標(SDMA)が入っているか確認する

 

・ おうちで体を触るとき、しこりの有無を月に一度チェックする

 

 

 

『 まだ元気だから、今はいいかな 』――そう思われている今この時期が、実はいちばん新・予防医療が効く時期です。

 

 

 

 

どうか、『 後悔する側にご家族・飼主様・ご自分を立たせない 』でください。

私たちが、そのために伴走します。

 

 

湘北どうぶつ次世代医療センター

院長  高橋 俊一

photo.fahtakahashi@gmail.com

046-274-7662(代)

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