【こんな症例も治りますシリーズ 658】 『 セカンドオピニオン診療: 他院から転院してきた 犬の舌に出来たリンパ腫 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の舌リンパ腫です。

■ 右側が首側です。 左側は、舌の先端方向です。

■ このようにハッキリ隆起して腫れる場合もありますが、舌の中で腫瘍が出来て、腫れる場合もあります。

 

 

参照サイト:

https://00m.in/yqdwV

 

### リンパ腫は犬の最も多い腫瘍の一つで腫瘍全体のうち10-20%程度とされています。

◆ 全身の様々な場所にあるリンパ節を中心に広がる『 多中心型 』、小腸などの消化管に発生する『 消化器型 』、胸の中心にあるリンパ節に発生する『 縦隔型 』が比較的多い発生部位として知られています。

 

 

◆ 一方、犬の口腔内にできる腫瘍は、腫瘍全体のうち6%程度を占めており、4番目に多い発生部位です。

 

 

◆ 犬では口腔内にできる悪性腫瘍は、悪性メラノーマ、扁平上皮癌、繊維肉腫の順で多いとされています。 また大部分は歯肉に発生します。

 

 

◆◆ 今回、リンパ腫としても口腔内にできる腫瘍としても珍しい、舌のリンパ腫に遭遇しました。

 

 

 

 

犬 ゴールデンレトリーバー、14歳、メス(避妊手術済み)

 

 

【 1か月前から舌が腫れてきて、徐々に食べ物が飲み込みづらくなってきた 】とのことで来院されました。

 

 

 

■ ワンちゃんの食欲は十分にあったのですが、固形の食べ物をうまく食べることができず、スープ状やペースト状のごはんを何とか食べているという状況でした。

 

 

■ 見てみると舌の右側の付け根の方が分厚く腫れていて、その腫れによって舌を口の中に収めることができず、舌の先端が少し口からはみ出している状態でした。 腫れている部分には一部歯が食い込んだような傷跡がありました。

 

 

 

■■ 見た目の状況からは、自分で舌を噛んでしまったなどの外傷と感染による腫れか、何らかの腫瘍による腫れが疑われました。

 

 

 

◆◆ かかりつけの病院で抗生物質を処方されたようですが、それだけでは腫れはほとんど引かなかったようです。

■ 抗生物質で腫れが引かないとなると、いよいよ腫瘍が疑わしくなりますが、診断のためには患部に針を刺すなどして、細胞などの材料を取る必要があります。

 

 

 

■ 病変が口の中にあるので、麻酔や鎮静をかけないと材料をとることは難しいのですが、高齢で体も弱っているところに麻酔をかけるのもリスクがあります。

 

 

 

◆◆ ご家族と相談のうえで、もう少しお薬での治療を行うことにしました。 抗生物質の種類を変えて、抗炎症薬を追加で処方しました。

 

 

 

 

■ これにより若干舌の腫れは引いたものの、依然として食事を飲み込むのは困難な状況でした。 また、舌の腫れだけでなく下顎リンパ節も腫れてきました。

 

 

 

■ ここで、腫れているリンパ節に注射針を刺して細胞を採取して細胞診を行いました。 体表リンパ節の細胞診であれば麻酔をかけずに行うことができます。

 

 

 

◆◆ 細胞診の結果は『 リンパ腫 』でした。

 

 

■ 細胞診の実施と共にステロイドの投与を始めていましたが、このステロイドが良く効いてくれて、1週間後には舌の腫れはほとんどなくなり、食事もガツガツと食べられるまで回復しました。

 

 

■ リンパ腫には抗がん剤がとても良く効いてくれることが多いのですが、抗がん剤が使いづらい場合にはステロイドでも一時的に腫瘍を小さくすることができます。

 

 

■ この症例は高齢で、腎機能の低下があることなどから積極的には抗がん剤が使いにくく、ステロイドだけで治療していますがとても順調に経過しています。

 

 

■ このように抗がん剤が使いにくい場合には、ほかにも体の免疫力を上げるサプリメントを与えてがんの進行を抑えることで、生活の質を維持することもできます。

 

 

■ 高齢化に伴って、腫瘍を患うワンちゃんは年々多くなっているように感じます。 その中には様々な理由で診断や治療が難しい症例も時々見られます。

 

 

 

■ そのような場合でも、出来ることをひとつひとつ諦めずに行っていくことで病気の苦しさから回復させられることもあります。

 

 

 

◆◆ 当院では治らない病気であっても、病気の辛さを取り除くためにスタンダードな治療から代替療法など、様々な治療法を取り入れています。

 

 

 

◆◆ 診断がつかない、なかなか体調が回復しないなどお困りのことがありましたら、お気軽に当院にご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 別府雅彦

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