【こんな症例も治りますシリーズ 654】 『 セカンドオピニオン診療: 他院から転院してきた 免疫介在性血小板減少症の再発 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、犬の黒色便です。

■ 犬の黒色タール便は緊急事態でしょうか?

■ 犬の黒色便・下血は【危険信号】サインです。

 

 

### 血小板とは血液に含まれる成分の一つで、出血したときに血を固めて出血を止める役割を担っています。

 

 

◆ この血小板が、自らの免疫システムによって破壊されて減少してしまう病気があり、免疫介在性血小板減少症と呼びます。

 

 

◆ 血小板の数が少なくなると、けがなどで出血した場合に血が止まりにくくなるだけでなく、何もしていなくても自然に皮下出血や粘膜からの出血が起こるようになります。 消化管などから大量に出血すると重度の貧血を引き起こし、命にかかわることも多い病気です。

 

 

 

犬 トイプードル、8歳、メス(避妊手術済み)

 

 

【 かかりつけの動物病院で4年前から免疫介在性血小板減少症の治療を行っていましたが、半年前に再発しました。 薬を増やすことで何とか回復しましたが、また再発してしまいました。

さらに薬を増量していましたが、血小板の数は回復せず、ついに貧血まで起こってしまいました。

近くの救急病院で輸血をしてもらい 】、今後の治療のご相談に来院されました。

 

 

◆◆ 貧血の程度を表すヘマトクリット値(正常:37-55%)は輸血前に10%だったものが25%まで回復していましたが、血小板はゼロで全く回復していませんでした。

 

 

 

■ 血小板を破壊する免疫システムを抑制するために通常プレドニゾロンというステロイドのお薬が良く使われますが、すでに最大用量近くまで内服薬が使われていました。

 

 

■ これまでの経過を踏まえるとさらに強力な治療が必要だと考えられ、ステロイドの作用をより確実にするために連日注射で投与するのに加えて、免疫システムの異常を調整するために幹細胞培養液を用いた再生医療を同時に行うこととしました。

 

 

◆◆ ところがステロイドと再生医療の併用療法を行って数日しても血小板は回復せず、貧血が徐々に悪化し始めました。

 

■ 血液中のアルブミン濃度も低下しており、黒色便が出ていたことから消化管出血による貧血だと思われました。

 

■ 入院直後は元気な様子でしたが、貧血の進行に伴って徐々に元気や食欲がなくなってしましました。

 

 

 

## まれに免疫介在性血小板減少症に併発して、自己免疫による貧血である免疫介在性溶血性貧血が起こることがあります。

 

 

# これらの両方が起こることをエバンス症候群と呼び、より深刻な状態になることが多い病気です。

 

 

■ この症例では免疫介在性溶血性貧血に特徴的な赤血球の凝集像が顕微鏡では確認できず、この時点ではエバンス症候群にはなっていないものと思われました。

 

 

 

■ ただ、いずれにしてもさらに強力な治療が必要な状況だと思われ、ヒトの免疫グロブリン製剤であるガンマガードというお薬を投与することにしました。

 

■ そのうえで、進行してしまった貧血を改善するために再度輸血を行いました。

 

■ また、これらと並行して再生医療も継続しました。

 

■ これらの治療の甲斐があって、治療を開始して1週間でようやく血液中に血小板が確認できるようになりました。

 

 

 

■ 血小板の増加に伴って貧血の進行も止まり、黒色便も見られなくなりました。

 

■ その後、ステロイドの投与を内服に変更し、ほかの免疫抑制剤のお薬を併用していますが、順調に血小板は回復して正常値まで増加しました。

 

 

◆◆ 再々発症例ですので非常に慎重な経過観察が必要になりますが、ひとまず危機的状況は脱することができて一安心です。

 

■ 免疫介在性の病気は再発するとコントロールが非常に困難になることが多い印象ですが、できることを着実に行い、組み合わせていくことで危機を乗り越えることもできます。

 

■ 手段がある限りはあきらめずに治療を行うことの力強さを改めて感じた症例でした。

 

 

獣医師 別府雅彦

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