【こんな症例も治りますシリーズ 616】 『 犬の突発性後天性網膜変性(SARDS) 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、メラン100の光刺激による瞳孔変化です。

■ 左が赤色光(強度200 kcd/m²の630nm光)の瞳孔変化です。 瞳孔は、無反応でした。

■ 右が青色光(同上の480nm光)の瞳孔変化です。 瞳孔は、縮瞳しました。

■ 詳しくは、本文に解説してあります。

 

参照サイト:

https://onl.tw/ejby8ss

 

犬 チワワ 8歳 オス (去勢手術済み)

 

 

【 急に目が見えなくなった 】、ということで来院されました。

 

 

 

◆◆ 視覚試験をしてみると、威嚇反応という、物が近づいてきた時に目をつぶる反応がありません。

 

 

 

■ どうやら視覚が低下、もしくは消失しているようです。

 

 

■ 眼が見えなくなる原因は種々あります。

 

 

1) 眼内の透光体が濁っている場合(白内障、硝子体出血、角膜病変等)

2) 網膜の異常(網膜変性症、網膜剥離等)

3) 視神経など、情報伝達系に異常がある場合(視神経の異常、脳炎等の脳疾患)

4) 画像処理をする大脳に異常がある場合(脳炎、脳腫瘍など)

 

 

■■ 以上のリストにありますように、慎重に眼科検査だけでなく、神経学検査も行う必要があります。

 

 

■ 眼科一般検査を、細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ)、眼圧検査(トノペン)、眼底カメラ検査といった機器を使用して検査します。

 

 

 

■ 結果としては角膜に傷もなく、眼内の炎症は無さそうで、眼圧も正常でした。

 

■ 眼底検査をしてみると、網膜血管や視神経にも見える範囲で異常はありません。

 

■ 網膜の働きを調べる為には、網膜電位図検査という全身麻酔下での検査が適応ですが、基本的に大学病院などの二次施設のみでしか行えません。

 

 

 

★★ 当院には、簡易的に網膜の働きを調べる検査としては、メラン100という検査器械を使った検査があります。

 

 

★ 暗い部屋で、青色光と赤色光を使用して、眼底の網膜細胞と、瞳孔との連動の動きを調べる検査です。

 

 

★ 赤色光は神経節細胞には反応しませんが、青色光は神経節細胞と視細胞両方に反応があります。

これを利用して、網膜の視細胞のみに異常があるのか、あるいは他に異常があるのか判断します。

 

 

 

■ 結果は、赤色光にはまったく反応なく、青色光には正常に縮瞳しました。

 

 

 

■ 画像的に網膜に問題がなかったことと、一般視神経検査結果や、メラン100の結果から『 突発性後天性網膜変性(SARDS) 』と診断致しました。

 

 

 

■ この病気は残念ながら根本的に治療法がなく、視力が回復することはありませんが、症状の進行を遅らせる薬はあります。

 

 

 

■■ しかし、犬は聴覚や嗅覚、記憶を頼りに生活している部分も多くあります。

 

 

 

■ 怪我をしないような生活スタイル、生活環境を作ってあげることが必要です。

 

 

■ 今後も注意深く診療していきたいと思います。

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

046-274-7662

 

photo.fahtakahashi@gmail.com

 

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