【こんな症例も治りますシリーズ 586】 犬の『 難治性の下痢を伴う蛋白漏出性腸症(セカンドオピニオン診療) 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、蛋白漏出性腸症の内視鏡像です。

■ 左が胃の入口の噴門部像です。
★ 粘膜が軽度に水膨れしているように見えます。
黒い線は、内視鏡のプローブです。

■ 右は、十二指腸の粘膜像です。
★ やはり、水膨れしています。 粘膜表面が鮮明に映らず、薄ぼんやりとしています。

 

犬 チワワ 7歳 オス(去勢手術済)

 

 

 

【 他院で治療をするが、下痢が治らない 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ 来院時、血液検査を行うと、アルブミンという血中タンパク質の値が1.7g/dLしかありませんでした。

 

 

 

■ アルブミンの正常値の下限値が『2.5g/dL』ですので、低アルブミン(タンパク)血症を起こしています。

 

 

■■ 症状から蛋白漏出性腸症が疑われました。

 

 

 

■ 蛋白漏出性腸症とは、蛋白質が消化管から漏れ出してしまう病状で、血液中の蛋白質が低下してしまいます。

 

 

 

■ 原因としては、腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患(IBD)、消化器型リンパ腫、感染症、胃腸からの出血、腸重積などのリストが挙がります。

 

 

■ 腎臓病、肝臓病の除外診断も必要です。

 

 

 

■ 種々の検査から、腎臓、肝臓病は否定診断されました。

 

 

 

 

■ 診断には内視鏡検査と同時にCT検査を行い、腫瘍病変を否定診断することとしました。

 

 

 

 

■ CT検査では特に異常ありませんでしたが、内視鏡では十二指腸がやや浮腫(水腫とも言いますように、水膨れ状態)しているように見えました。

 

 

 

 

■ 内視鏡検査において、胃、小腸内腔から細い鉗子を使い、組織の病理検査のために内視鏡生検を行いました。

 

 

 

★ 後日、病理組織検査の結果が帰ってくると、『 リンパ球性形質細胞性腸炎 』でした。

 

 

 

◆◆ これは犬、猫でもっとも頻繁に認められる炎症性腸疾患のパターンです。

 

 

 

■ 他には好酸球性腸炎、肉芽腫性腸炎、慢性組織球性潰瘍性大腸炎などがあげられます。

 

 

 

■ 発生の原因としては、いまだ明確にはなっていませんが、免疫機能の暴走、特定の細菌や食物に対する腸粘膜免疫反応の二つが推測されています。

 

 

 

■ 治療としては、食事療法として低アレルギー食に食事を一本化、副腎皮質ステロイドの投与、駆虫を行いました。

 

 

◆◆ すると、一週間後には、アルブミンは正常値に。

泥状だった便も固まってきてくれました!

 

 

 

■ 今後もしっかりと経過を追っていきたいです。

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

 

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