【こんな症例も治りますシリーズ 547】 犬の『 心タンポナーデ 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、
■ 左が心タンポナーデのレントゲンです。
⇒ 心臓が円形(矢印部分)に近いです。

◆ 右は、心タンポナーデの超音波検査画像です。
⇒ 矢印部分の帯状の黒色部分が、心嚢内に出血した血液です。

 

犬 柴犬 8歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 昨日から動かない、食欲がない 】ということで来院されました。

 

 

 

◆◆ この子は、他院で脾臓の血管肉腫(悪性腫瘍)を手術した経緯があります。

 

 

■ 聴診をしてみると、心音が遠く聞こえます。

 

 

■ また、股動脈圧が低下しています。 低血圧が疑われます。

 

 

■ 全身検査を行うと、血液検査では軽度の貧血胸部レントゲンで心拡大が見られました。

 

 

■ 心臓の超音波検査を行うと、心嚢水がたまり、心臓を圧迫しています。

 

 

 

★ また、右心房に腫瘍が見られました。

 

 

 

★ この位置に腫瘍がある場合は、ほぼ『 心臓内に発生する血管肉腫 』です。

 

 

 

★ このような際は、必ず肝臓やほかの臓器にも転移していないか『 CT検査を中心とした画像診断 』が、本来であれば必要です。

 

 

 

◆◆◆ この状況と検査データから、心臓腫瘍からの心嚢内への出血による、『 心タンポナーデ 』が強く疑われます。

 

 

 

★ 心タンポナーデとは、心臓を覆う心外膜(心嚢膜)内に液体が貯留し、心臓の拍動を阻害し、心不全で死に至ってしまう病態です。

 

 

■ すぐに心嚢穿刺を行い、液体を抜去しました。

 

 

★ 40mlも抜去することができました。

 

 

■ 心嚢水を抜去後、心臓の機能評価をしてみると、心臓の収縮力が復活していました。

 

 

■ 全身の状態も上がっており、顔をあげる様子が出てきました。

 

 

 

 

◆◆◆ 心タンポナーデの再発を防ぐためには、心外膜を切除する心臓外科手術が適応になりますが、飼主様は予後も考え、選択されませんでした。

 

 

■ 再度、急変するリスクもありますが、安静に見ていく事になりました。

 

 

■ これからも経過を慎重に見ていきたいと思います。

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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