【こんな症例も治りますシリーズ 546】 犬の『 前十字靭帯断裂症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、『 前十字靭帯断裂の関節外制御法手術 』の各種方法を簡単に示した絵です。
■ どの膝の角度で糸を締めた方が良いか、などが成功のポイントになります。
■ この方法の欠点を解決するために、TPLOなどの骨切り術などが開発されています。

 

 

参照サイト:

https://bit.ly/3TJL5tv

 

犬 トイプードル 6歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 今朝、おもちゃを追いかけて走った後から右後肢をかばっている 】ということで来院されました。

 

 

 

◆◆ 院内では、完全に右後ろ足を挙げてしまっています。

 

 

■ 触診してみると、右膝にクリック音を認めました。

 

 

■ これが認められると、膝の軟骨組織の半月板が損傷している可能性があります。

 

 

■ また、カラダを横にして触診してみると、『 ドロアーサイン 』も認めました。

 

 

※ 『 ドローアーサイン 』とは、大腿骨と脛骨がずれている、という事です。

 

 

 

■ 膝関節の中にある前十字靭帯の損傷も疑われます。

 

 

■ レントゲンを撮影してみると、やはり大腿骨が正常位置よりも後方に滑り落ちています。

 

 

■■ 診断は、『 前十字靭帯断裂 』です。

 

 

 

 

■ 膝関節の中にある『 前十字靭帯 』は、後肢が地面についた時に脛骨(下腿骨)が前方に滑っていかないように、また脛骨(下腿骨)が『 内旋 』していかないように押さえる働きがあります。

 

※ 『 内旋 』とは、膝関節で言うと、足を伸ばした状態で親指を外側から内側に捻るような動き、の事です。

 

 

■ 前十字靭帯が切れてしまうと、膝が沈み込むようになり、歩行困難になります。

 

■ 症状が進むと、膝関節炎や膝関節のクッションである半月板損傷が起こってしまうのです。

 

 

 

■■ 治療には保存療法、外科治療があります。

 

 

 

■ 保存療法は変形性関節症が悪化してしまう可能性があり、可能であれば外科手術をお勧め致します。

 

 

■ 外科治療では、大腿骨と脛骨(下腿骨)を非吸収性の糸で固定して関節を正常位置に整復する、『 関節外制動法 』や、脛骨(下腿骨)が前方に移動しないように膝関節を安定させるために脛骨の角度を調整する方法の『 TPLO(脛骨高平部水平骨切り術) 』などがあります。

 

 

◆◆ 今回は、飼主様の事情をお聞きした上で『 関節外制動法 』の手術を行いました。

 

 

 

■ 大腿骨種子骨および脛骨(下腿骨)近位を、手術用の非吸収糸で締結します。

 

 

■ レントゲンで膝関節周囲の骨の位置が正常な位置になっているのがわかります。

 

 

 

■ 手術後、2週間で抜糸する事ができ、1ヶ月後には正常に歩行ができるようになりました。

 

 

★ 再発した際には、TPLO(脛骨高平部水平骨切り術)の手術方法を選択する事になります。

 

 

■ 今後もしっかりケアしていきたいと思います。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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