【こんな症例も治りますシリーズ 545】 ワンちゃんの『 眼の ブドウ膜炎 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、眼の断面図で『犬のブドウ膜炎が発生する位置』を示しています。
◆ 断面図の向かって右側は、眼の表面です。
◆ 向かって左側は、眼の奥です。
■ 今回のブドウ膜炎は、眼の表面側で起きました。 すなわち、一番左側の絵の状態ですね。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3Ar1BF2

 

犬 フレンチブルドッグ 6歳 オス(去勢手術なし)

 

 

【 眼が赤く、しょぼしょぼして痛そうだ 】ということで来院されました。

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、「元気、食欲はあるんだけど、最近、左の耳を痒がって、結構激しく掻いていたのですが、2日前から左眼の白眼が充血していて、また涙目でちゃんと開かない時があるんです。」とのことでした。

 

 

■■ 『 ぶどう膜 』とは、

 

① 虹彩(眼球に入ってくる光の量を調整する絞りの役目)、

 

② 毛様体(虹彩を調整する筋肉)、

 

③ 脈絡膜(脈絡膜は眼球や網膜に栄養を送る機能)などの総称です。

 

 

 

■■ ぶどう膜が炎症を起こすと、眼球結膜と強膜に強い充血(いわゆる赤目)、羞明(まぶしがること)や流涙、痛みによる眼瞼痙攣がしばしばみられます。

 

 

■ また、ぶどう膜炎を起こしている側の眼に、縮瞳(瞳が小さく縮まっている状態)がみられることもあります。

 

 

■ 網膜にまで炎症が広がると、緑内障、視力低下や失明に至る場合があるので、早めの治療が大切です。

 

 

 

◆◆◆ 原因としては、

 

1)目の外傷、

 

2)白内障や結膜炎などの眼疾患の悪化、

 

3)ウイルスや細菌による感染症、

 

4)免疫介在性疾患、アレルギー、寄生虫性疾患などのほか、

 

5)膵炎などの疾患に併発する場合や、

 

6)シベリアンハスキー、サモエド、秋田犬、ミニチュアダックスなど一部の犬種では遺伝性の要因で発症することもあります。

 

 

 

■ したがって、眼検査、特にスリットランプ検査や眼圧測定(低眼圧を示していることが多いため)の他、血液検査、画像診断などを行う場合もあります。

 

 

■ 眼の治療には、

 

 

1)消炎剤や抗生剤、ステロイドの点眼薬を投与するほか、

 

2)炎症を抑えるステロイド剤などの内服薬治療が主な治療手段になります。

 

 

 

◆◆◆ さて、このワンちゃんの場合、詳細な眼の検査をしてみると、

 

 

1)左眼に眼球結膜と強膜に強い充血、流涙がみられ、また左側のみ縮瞳がみられました(後で縮瞳を治す薬剤を点眼すると正常にもどりました)。

 

2)また、流涙検査では涙の量は正常でしたが、フルオレセイン染色で角膜に傷があることがわかりました。

 

3)スリットランプ検査により、前眼房にフレアがみられ、

 

4)眼圧測定では、左眼の眼圧が低いことがわかりました。

 

 

 

■ これらのことから、「ぶどう膜炎」と診断しましたが、原因については(特定はできないのですが)問診から左耳を激しく掻いていたこともあり、もしかしたら誤って傷をつけた可能性も考えられたことから「外傷性ぶどう膜炎」と診断し、消炎剤、抗生剤および粘膜保護の点眼薬を処方しました。

 

 

■■ 2週間後、来院していただくと「先生、眼が赤いのも、涙目もなくなり、良くなりました」と、嬉しそうにお話下さいました。

 

 

■ 検査すると、左眼の充血、縮瞳もなくなり、眼圧も正常に戻っていました。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

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