【こんな症例も治りますシリーズ 509】 ワンちゃんの馬尾症候群も 適切な診断と治療で治します

上のイラストは、犬の腰骨からシッポの部分の骨と神経の簡易図です。
■ 赤い部分は、一番『馬尾症候群』が起こりやすい部分です。
■ 犬猫の尻尾を持って腰を挙げようとしたり、体勢を変えようとしないで下さいね。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3ylWsQ8

 

犬 ミックス犬 12歳 オス(去勢手術済み)

 

【 尻尾があがらない、オシッコをぽたぽた垂らす 】とのことで来院されました。

 

 

■ 飼い主様からお話を伺ってみると、約3週間前、突然、横になったまま立てなくなったため、近くのかかりつけ医に受診したところ、特に検査することもなく「椎間板ヘルニア」と診断され、消炎鎮痛剤とレーザーの治療により、数日後、立てる様になったとのこと。

 

 

★ ただ、尻尾はカラダの内側にダラーンとして、上がらないままで、また、オシッコをポタポタとたらすとのことから当院に来院されました。

 

 

 

■ さて、このワンちゃん、当院で、詳細な身体検査、神経検査、レントゲン検査おこなったところ、膝蓋腱反射の偽性亢進、第7腰椎と仙椎の亜脱臼が認められたことから「馬尾症候群」と診断されました。

 

 

■ 動物の背骨は、首(頚椎)、背中(胸椎)、腰(腰椎)、腰以降(仙椎・尾椎)で構成されています。

 

 

★ この背骨の中には脊髄神経が通っていて、その末端は腰椎中央の部分で馬の尻尾のように細かく分かれています。

 

 

★ この部分を総称して馬尾(ばび)神経と呼びますが、この神経の束に異常が生じた状態の総称が、「馬尾症候群」です。

 

 

★ 症状としては、しっぽの付け根を触ると痛がる・動かない+感覚がない、自力でオシッコができず、膀胱に尿がたまる・垂れ流す、後足の動きがおかしい、ふらつく等です。

 

 

 

 

■ 治療としては、症状が軽い場合は、ケージレスト(安静療法)や抗炎症剤の投与などを行います。

 

 

★ なお、内科療法に反応がない場合や、痛みが激しい場合は外科的処置が必要となり、脊椎減圧手術や脊椎固定術などの外科療法を行う場合もあります。

 

 

 

 

■■■ このワンちゃんの場合、かかりつけ医での治療を続けていても、尻尾が動かせない、排尿障害の症状が残っていることから、飼い主様の希望もあり、当院でできる次のレベルの治療として、オゾン療法を合わせて行うことにしました。

 

 

★ その後、オゾン治療3回目のため来院したとき、すっかり尻尾の動きはもとに戻り、左右に振ることが出来る様になっていました。

 

 

★ 飼い主様にお話を伺ってみると「お陰さまで、尻尾は良くなりましたが、まだ、時々、オシッコが終わった後もぽたぽたとオシッコを垂らすんです」とのことでしたので、尿検査を行ったところ、尿中に「大腸菌」が検出されたことから、「細菌性膀胱炎」の併発も疑い、抗生剤も処方することにしました。

 

 

 

■ さて、通院による治療は始まったばかりですが、これからも飼い主様と一緒にワンちゃんを見守っていけたらと思います。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

獣医師 泉 政明

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