【こんな症例も治りますシリーズ 429】 犬の急性緑内障 も適切な診断と治療で治します

ワンちゃんの緑内障の典型的な症状です。
本来透明なはずの角膜が白く濁り、本来白い結膜が赤く充血している所に注目して下さい。
★ ちなみに、右側の赤い部分が球結膜で、左側の薄い赤い部分が、瞬膜という結膜とは違う部位です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3xLo5im

 

 

犬 柴犬 8歳 オス 未去勢

 

【 昨日の夜から突然左眼を痛がる 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

◆◆ 診察をしてみると、やや左眼が拡大している様子と、角膜が白く濁っています。

 

 

■ トノペンという、眼科検査機器を用いて眼の硬さ、眼圧を測定してみると、60mmHgという硬さでした。

 

眼圧は通常、10-20mmHgが正常の眼圧と言われています。

 

 

■ 細隙灯顕微鏡という特殊な検査機器で、眼の中を検査して『 特に、水晶体(レンズ)の瞳孔の手前への脱臼が無いか 』を確認して、『 水晶体前房内脱臼、無し 』と診断しました。

 

 

※ 実は、この水晶体前房内脱臼がある場合は、治療方法が大きく違うのです。

要注意ポイントです。

 

緑内障が、初期治療で眼圧が下がらない時は、細隙灯顕微鏡でもう一回再確認したいです。
眼圧が下がらない原因が、【水晶体脱臼と瞳孔ブロック】の可能性があります。
★ 緊急手術が必要なケースです。
この絵は、一番左の図が正常の断面図で、右の3つの図は楕円形の水晶体の位置が目の前方に移動しているのですが、分かりますか? 【 水晶体と虹彩の癒着 】が起きて、眼内の房水の流れが止まってしまう可能性が高い状況です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/35PqiNY

 

■ ここで、『 急性緑内障(水晶体前方脱臼なし) 』の診断がつきました。 この子にとって、相当に痛い状態です。

 

 

 

◆◆ 緑内障、つまり眼圧が高くなってしまう病気ですが、要因としてはいくつかあります。

 

 

■ 1)眼球の中を満たす眼房水の流れ、排出がうまくいかなくなってしまい、眼圧が高くなってしまう『原発性緑内障(開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障)』

 

 

2)白内障等の眼科疾患が悪化し、その後に生じる炎症産物や悪性腫瘍のリンパ腫などにより眼圧が高くなってしまう『続発緑内障』

 

 

3)『先天性緑内障』がある場合もあります。

 

 

 

 

 

■ 閉塞性隅角緑内障の好発犬種は、柴犬、シーズー、アメリカンコッカースパニエル、チワワ、ビーグル、ダックスフンド、ゴールデンレトリーバーが挙がります。

 

 

 

 

 

◆◆ 緑内障は、眼科疾患の中で最も痛い疾患です。 この状態は救急状態です。 直ぐに眼圧を下げる必要があります。

 

 

■ まずはラタノプロストという眼房水の排出を促進する点眼薬を用います。 時間間隔を空けて、数回点眼を行いましたが、なかなか眼圧は下がりません…

 

 

■ 次は、注射薬のマンニトールという利尿剤を使います。 浸透圧利尿薬という種類で、尿量を増加することで眼房水を排出させます。

 

 

■ マンニトールを2回投与したところ、眼圧は30mmHgまで下がってくれました。

 

 

■ 今回は、痛みもひいてくれたようで、めでたく退院できました。

 

 

 

■ 今では、数種類の点眼薬で痛みや再発もなく、過ごしてくれています。

 

 

 

※ 最近、ラタノプロスト点眼液以外に新しい緑内障治療薬が獣医界でも使用され始めており、治療がかなり楽になってきました。

 

 

※ マンニトール治療の続発症を心配する獣医師たちもおりますが、治療後の点滴量などをしっかりと管理しているせいでしょうか、当院では問題は起こっておりません。

 

 

◆◆ 反対側の眼も緑内障を発症してしまうリスクがあるため、慎重に経過観察を行なっていきたいと思います。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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