【こんな症例も治りますシリーズ 403】 ネコちゃんの治りにくい 脾臓出血による腹水 + 副脾 も適切な診断と治療で治します

猫ちゃんの脾臓の位置は、『8』が正常です。 副脾は、通常正常の位置に近いところに存在する、との報告が多いです。 しかし、今回は、『9』の膀胱の横に存在していたので、診断に手間取りました。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3rqhPcZ

 

日本猫 8歳 オス(去勢済) です。

【 他院で腹水ありと診断され、食欲がなく呼吸が粗い 】とのことで来院されたネコちゃんです。

 

 

■ 当院来院時は、上記の症状が始まって一週間が経っていました。

 

■ その日の検査結果では、腹水は以前より減っているが貧血の亢進(さらに悪化している事)が見られました。

その後、的確な検査過程を経て、エコー検査などの画像診断を行ったところ、膀胱の横に大きなシコリが見られました。 

 

■ 次のステップの検査へと説明や準備をしていく中で、内服や点滴で様子をみましたが改善が見込まれず、飼主様の同意の元でCT検査を実施しました。

 

 

◆◆◆ CTの結果は、腹部の後方にある【 腹腔内に孤立した、他部位に転移や浸潤が無い腫瘤 】がありました。

 

■ この腫瘍を切除するために事前準備を充分に行って、麻酔をかけても大丈夫なカラダの状態にしてから、手術を実施しました。

 

★★★ 実際に腹腔内を開けたところ、【 脾臓の尾部の一部に亀裂があり、そこから出血が持続的に出ており、膀胱の横に独立した腫瘤が大網と言う脂肪組織に癒着して存在していました 】ので、腫瘤切除と脾臓の一部をサンダービートという特殊な外科器具を用いて、かなり短時間(約5分間)かつ的確に部分切除して、主目的を達成しました。

 

 

■ 切除した腫瘤は、病理組織診断で【 副脾 】と診断されました。

 

副脾とは生まれつきある脾臓とは別に生じる、腹腔内に脾臓と同じ組織を持った腫瘤のことです。 良性の腫瘍のため本来悪性では無いので切除の必要はないものです。 しかし、腫瘤は切除して病理組織診断をしないと、見た目では悪性良性が分かりませんので、今回は切除して精密検査を行いました。

また、症例数の少ない珍しい現象です。

 

 

■ 今回は、脾臓の一部が亀裂を生じて、そこから脾臓の一部の細胞塊が腹腔内に落ちて副脾になったと考えられます。

 

■ この子は副脾を切除し、出血を止めたところ非常に元気になりました。

 

★ 飼主様の話を総合すると、おそらくは遊んでる最中に腹部をぶつけるなどして、脾臓の一部の破裂のような状態になっていたのではないでしょうか。。。

 

★ 打ち所が良くて、良かったです。 もっと強く腹部を打っていたら、大量出血で亡くなっていたかもしれません。

 

 

獣医師 落合勇吏

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