【こんな症例も治りますシリーズ 391】 転院してきた犬の治りにくい皮膚疾患 も 適切な診断と治療で治します

オスのワンちゃんの皮膚です。 お腹が黒く沈着しているのが、慢性皮膚炎がある事を示しています。 甲状腺機能低下症でも、長期化すると黒い皮膚になります。

参照サイト:

https://bit.ly/3mVSXYq

 

ポメラニアン 5歳 メス(避妊済)

 

【 胸の痒みが、なかなか治らない 】とのことで来院されました。

 

■ 飼い主様にお話を伺うと、2ヶ月ほど前から胸の毛が薄くなり、痒みのためか頻繁に胸を地面にこすり付けるので、近院で診てもらったところ【膿皮症】と診断され、外用薬と抗生剤での治療を続けてきました。 でも、なかなか良くならないので、トリミングで来られた時に当院でも診てもらうことにした、との事でした。

 

 

■ 当院でも身体検査、皮膚検査を実施した結果、胸の痒み、脱毛、皮膚の赤み及び細菌の検出などから【表在性膿皮症】と診断しました。 一方、胸以外にも腹部でも脱毛、皮膚の赤みがみられましたが、胸部とは異なり、痒みもなく乾燥した肌で縦に小さな皺がありました。 また、ここから細菌は検出されませんでした。

 

 

 

 

■ 甲状腺機能低下症では、臨床症状として脱毛、毛質の変化や乾燥肌などがみられ、また膿皮症、脂漏症などの皮膚疾患を併発することもあります。 これらは甲状腺ホルモン(T4)が低くなると皮膚のバリア機能が阻害されるためと考えられています。

 

 

 

■ さて、このワンちゃん、胸部と腹部の皮膚症状から甲状腺機能の低下が考えられたので、院内で血中のT4を測定したところやはり低値を示しました。 そこでこれまでの治療に加え、T4を上昇させるお薬も処方することにしました。

 

■ 数週間後、血中T4を測定すると値は正常値の範囲内に戻っていました。 また、胸とお腹の毛も生え、赤みも皺も消えて乾燥肌もなくなっていました。 もちろん胸の痒みもないことから、もう地面にこすり付けることもしなくなったと飼い主様も喜んでおられました。 これはお薬だけでは治り難かった膿皮症も、皮膚のバリア機能が正常に働くようになったためと考えることができます。

 

 

 

■ 当院では、皮膚疾患の診断・治療において、局所(皮膚)だけに注目するのではなく、全身状態を考慮した診察・検査をするよう心掛けております。

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

獣医師 泉 政明

Page Top