【こんな症例も治りますシリーズ 866】『 セカンドオピニオン診療 : ワンちゃんの寝ているときの失禁 』も適切な診断と治療でコントロールします

 

 

犬 ボーダー・コリー 2歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 寝ているときに、おしっこが漏れてしまう 】という問題点で来院されたワンちゃんです。

 

 

 

 

◆◆ このような飼主様からのご相談の場合、まず失禁の原因を『 鑑別 』します。

 

■■ ワンちゃんの尿失禁(にょうしっきん = 自分の意思とは関係なく、おしっこが漏れてしまうこと)には、さまざまな原因があります。

 

■ 特に若いワンちゃんでは、次のような病気を『 鑑別(かんべつ = どの病気なのかを1つずつ見分けていくこと) 』する必要があります。

 

・ 異所性尿管(いしょせいにょうかん = 腎臓から膀胱へつながる管が、生まれつき正しい位置に開いていない異常)

 

・ 尿道括約筋機能不全(にょうどうかつやくきんきのうふぜん = おしっこを止めておく筋肉の締まりが弱くなった状態)

 

・ 膀胱炎などの下部尿路疾患(かぶにょうろしっかん = 膀胱や尿道の病気)

 

・ 神経疾患(おしっこをコントロールしている神経の病気)

 

・ 膀胱や尿道の構造的な異常(かたちそのものの異常)

 

・ 膣形成異常(ちつけいせいいじょう)などの先天性疾患(せんてんせいしっかん = 生まれつきの異常)

 

・ 多飲多尿(たいんたにょう = お水をたくさん飲んで、おしっこがたくさん出る)を起こす全身の病気

 

 

 

 

■■ また、避妊手術を受けたメスのワンちゃんでは、『 手術後のホルモン環境の変化にともなう尿道括約筋機能不全 』による失禁も、重要な鑑別のひとつになります。

 

 

 

 

◆◆ まず行った検査

 

■ はじめに全身状態を確認したうえで、次の検査を行い、尿路感染症(にょうろかんせんしょう = おしっこの通り道にバイ菌が感染する病気)や膀胱の病気などの可能性を評価しました。

 

・ 血液検査

・ 尿検査

・ 画像検査(レントゲン検査・超音波検査)

 

■ 画像検査では、明らかな異常は認められませんでした。

 

■■ しかし、異所性尿管や膣形成不全などは、通常の画像検査では評価が難しく、これだけでは完全に否定することができません。

 

 

 

 

◆◆ CT検査について

 

■ 異所性尿管などの『 生まれつきの尿路の異常 』をより詳しく評価するためには、麻酔をかけたうえでのCT検査(からだを輪切りにするように撮影して、細かく見ることのできる精密な画像検査)が有用です。

 

■ また、必要に応じてCT検査と同時に尿路の精査(せいさ = くわしく調べること)を行うことで、通常の検査では分かりにくい構造の異常を確認できる場合があります。

 

■ 本症例でもCT検査による精査をおすすめしましたが、飼い主様とご相談のうえ、今回はそこまでの検査は希望されず、まずは治療を行いながら経過をみることとなりました。

 

 

 

 

◆◆ 治療と経過

 

■ これまでの検査結果と、次の2つの特徴から、『 ホルモン環境の変化にともなう尿道括約筋機能不全による尿失禁 』の可能性を考えました。

 

・ 避妊手術を受けたメスのワンちゃんであること

 

・ 寝ているときに失禁するという症状であること

 

 

■ そこで、ホルモン剤による治療を開始しました。

 

 

■■ 治療開始から約2週間後の再診では、失禁はほぼ認められなくなっていました。

 

 

■■ 治療に対して良好な反応が得られたことから、ホルモン性の尿失禁が関与していた可能性が高いと考えています。

 

 

■ 今回のように、『 寝ているときだけおしっこが漏れる 』という症状でも、その原因はひとつではありません。

 

■ 特に若いワンちゃんでは、生まれつきの尿路の異常なども考慮する必要があり、症状・年齢・避妊手術の有無などを踏まえて、ていねいに鑑別を進めていくことが重要です。

 

■ 今回は治療によって良好な反応が認められていますが、今後も失禁の再発や症状の変化に注意しながら、経過をみていく予定です。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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