【こんな症例も治りますシリーズ 865】『 救急診療 : ワンちゃんの感電事故(電気コードをかじってしまった) 』も適切な診断と治療でコントロールします

 

 

犬  トイプードル 2歳 オス(去勢手術済)

 

【 コンセントに差さったままのドライヤーのコードをかじってしまった 】ということで来院されたワンちゃんです。

 

 

■■ 電気コードの誤食(ごしょく=あやまって口にしてしまうこと)というと『 コードを飲み込んでいないか 』が気になるところですが、コンセントにつながった状態では、『 感電による障害にも注意 』が必要です。

 

 

 

◆◆ 今回の症例

 

 

■ ご家族が気づいたときには、コンセントに差さったままのドライヤーのコードをかじっていたとのことでした。

 

■ 来院後、まず口の中を確認しましたが、感電による明らかな火傷(やけど)や傷は認められませんでした。

 

■ また、コードの一部を飲み込んでいる可能性や、感電による肺への影響を確認するため、レントゲン検査を行いました。

 

・ 消化管(食道・胃・腸)内に、明らかな異物像や閉塞(へいそく=詰まり)像を疑う所見なし

・ 肺水腫(はいすいしゅ=肺の中に水がたまる状態)を疑う所見なし

・ 口腔内(こうくうない=口の中)に、明らかな電撃傷(でんげきしょう=感電によるやけど)なし

 

 

■ 幸い、今回は重篤(じゅうとく=命に関わるほど重い)な感電事故には至っていないと考えられました。

 

 

 

 

◆◆ 電気コードを齧る(かじる)と何が起こる?

 

■ 通電している(電気が流れている)電気コードをかじると、口を介して電流が流れ、電撃傷(感電による外傷)を起こすことがあります。

 

■ 特に、コードと直接ふれる唇や舌、歯肉(しにく=歯ぐき)などには、火傷が生じることがあります。

 

■ また、感電事故で注意したい合併症(がっぺいしょう=あとから起こってくる別の異常)のひとつが肺水腫です。

 

■ 肺水腫になると肺の中に液体がたまり、十分に酸素を取り込めなくなるため、呼吸が速い、呼吸が苦しそう、咳をする、ぐったりするといった症状がみられることがあります。

 

■ 『 感電時の肺水腫のレントゲン像は、体の横から診る胸部像だと、肺全体ではなく、背骨側だけに出来る特徴的な肺水腫像 』が見られます。

 

■ 感電した直後には大きな異常がなくても、『 時間が経ってから呼吸器の症状が現れる可能性 』もあるため、しばらくは注意して観察する必要があります。

 

 

 

 

◆◆ コードの誤食にも注意

 

■ もうひとつ注意したいのが、コードの被覆(ひふく=コードを包んでいるカバー)部分の誤食です。

 

■ かじったプラスチックやゴムを飲み込んでしまうと、胃や腸の中に異物として残り、滅多に無いことですが、場合によっては消化管閉塞(小腸などに詰まってしまう状態)を起こすことがあります。

 

■ 嘔吐(おうと=吐くこと)を繰り返す、食欲がなくなる、元気がなくなるといった症状がみられた場合には注意が必要です。

 

 

 

 

◆◆ おうちで出来る対策

 

■ 子犬や子猫はもちろん、普段から物をかじる癖がある子では、電気コードによる事故が起こる可能性があります。

 

■ 使用していない家電はコンセントから抜いておく、コードを動物の届かない場所にまとめる、コードカバーを使用するなど、日頃から対策しておくことが大切です。

 

■ ドライヤーだけでなく、延長コード、電気毛布、パソコンやスマートフォンの充電ケーブルなど、身近な電気製品にも注意しましょう。

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

■ 今回は幸い、口の中の火傷や肺水腫、消化管閉塞などの異常は認められませんでした。

 

■ しかし、コンセントにつながったコードをかじる事故は、単なる誤食だけでなく、感電による重篤な障害につながる可能性があります。

 

■ 『 コードをかじってしまったけれど、元気だから大丈夫 』と自己判断せず、特に電気が流れていた可能性がある場合には、早めに動物病院へご相談ください。

 

 

 

 

◆◆ 本来は、『 起きてしまった事故を治す 』よりも、『 事故を起こさせない 』ことが、最も価値の高い医療です。

 

■ 感電事故は、そのほとんどが、ご家族の側のちょっとした管理で防ぐことができる事故です。

 

■ そして、この事故の怖いところは、事故の直後には元気そうに見えてしまう点にあります。

 

★ 電気コードをかじった場合、外から見て元気であっても、肺水腫は数時間から半日ほど遅れて現れてくることがあります。

 

 

 

 

★★ ですから『 元気だから、様子をみる 』のではなく、『 元気なうちに、検査を受ける 』ことが、その子の命を守る一番の近道になります。

 

■ 当院では、こうした救急の可能性がある事故に対して、レントゲン検査などで外からは見えないダメージまで確認し、必要に応じて入院での経過観察をお勧めしています。

 

■ 『 何もありませんでした 』と確認できることこそが、検査の一番の価値だと考えています。

 

 

 

 

◆◆ 『 予防 ⇒ 早期受診 ⇒ \元気に長生き/ 』が世界では常識です。

 

 

 

 

 

獣医師 伊藤 雅志

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