【こんな症例も治りますシリーズ 864】『 ワンちゃんの口腔内腫瘍(口の中のできもの) 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、今回のマルチーズちゃんの『 口腔内腫瘍 』です。

◆ 左の写真 = 上あごの歯ぐき(前歯から犬歯のあたり)にできた、赤くもり上がったしこりです。ご飯が食べづらくなっていた原因は、このデキモノでした。

◆ 右の写真 = 全身麻酔をかけ、清潔な布(ドレープ)をかけて口の中の手術を行っているところです。

◆ 組織生検の結果は『 周辺性歯原性線維腫 』= 良性の腫瘍でした。CT検査で広がりを確認したうえで切除し、現在はしっかりとご飯を食べられています。

 

 

犬 マルチーズ 14歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 口の中のできもの 】で来院されたワンちゃんです。

 

 

◆◆ 飼い主様からは、

 

『 口の中にできものができた 』

『 最近、ご飯が食べづらそうにしている 』とのことで、ご相談をいただきました。

 

 

■ 実際に口の中を確認すると、口腔内(口の中)にしこりが認められました。

 

 

 

 

■■ 高齢のワンちゃんの口の中にできものがある場合、次のように、さまざまな可能性があります。

 

・ 良性腫瘍(タチの良いできもの)

・ 悪性腫瘍(がん = タチの悪いできもの)

・ 炎症性病変(炎症による腫れ)

・ 歯や歯周組織に関連した病変(歯・歯ぐきのトラブル)

 

■ つまり、『 見た目だけでは、良性か悪性かを判断することはできない 』ということです。

 

 

 

 

◆◆ まずは全身の状態を確認しました

 

 

■ 14歳と高齢ですので、いきなり麻酔をかけるのではなく、まず全身の状態を確認するための検査を行いました。

 

 

■ 血液検査などで全身状態を確認したところ、麻酔や検査を行う上で大きな問題は認められませんでした。

 

 

■ そこで、より詳しく調べるために、麻酔下(眠らせた状態)での検査を行うことにしました。

 

 

 

 

◆◆ なぜ『 生検 』と『 CT検査 』を同時に行うのか?

 

 

■ 口の中のデキモノでは、細胞診(細い針で細胞だけを採る検査)だけでは診断が難しい場合があります。

 

 

■ また、口の中のしこりは、場所によっては針を刺すことが難しかったり、ワンちゃんの性格によっては安全に細胞を採取できなかったりすることもあります。

 

 

■ そこで今回は、麻酔をかけて、しこりの一部を切り取って調べる『 組織生検 』を行いました。

 

 

■ さらに、同時にCT検査(からだの断面を撮影する精密検査)も実施しました。

 

 

 

 

■■ CT検査では、次のことを確認します。

 

 

・ しこりが、どこまで広がっているのか

・ 周囲の骨や組織への影響はないか

・ リンパ節や肺などへの転移(他の場所への広がり)を疑う所見がないか

 

 

 

■ もし悪性腫瘍だった場合には、今後の治療方針を決めるうえでも、非常に重要な情報になります。

 

 

 

 

 

◆◆ 検査結果

 

 

■ 組織生検の結果、『 周辺性歯原性線維腫(しゅうへんせい しげんせい せんいしゅ) 』という病変であることが分かりました。

 

 

■ これは、歯を作る組織に関連して発生する腫瘍で、『 悪性腫瘍ではない、良性の腫瘍 』です。

 

 

 

 

■■ ひとまず悪性腫瘍(がん)ではないことが分かり、飼い主様も安心されました。

 

 

■ しかし、良性だからといって、必ずしもそのままで良いとは限りません。

 

 

 

 

 

◆◆ なぜ切除することにしたのか?

 

 

■■ 今回のしこりには、次のような問題がありました。

 

・ すでに、ご飯が食べづらそうになっている

・ 今後、さらに大きくなる可能性がある

・ 大きくなることで、出血などのトラブルにつながる可能性がある

 

 

■ そこで、CT検査でしこりの広がりを確認し、その情報をもとに切除する範囲を検討しました。

 

■ その上で、しこりを外科的に切除することにしました。

 

 

 

◆◆ 術後の経過

 

■■ 手術後は大きな問題もなく、次のように回復しました。

 

 

・ 元気が回復した

・ 食欲も良好

・ ご飯もしっかり食べられるようになった

 

 

■ 飼い主様からも、
『 以前より、ご飯を食べやすそうにしています 』 とのことで、現在も元気に過ごしています。

 

 

 

 

◆◆ この症例から分かること

 

 

■■ 今回のポイントは、『 口のできものは、見た目だけでは良性か悪性か分からない 』ということです。

 

 

■ 特に高齢のワンちゃんで口の中のしこりを見つけた場合、

『 年齢的に仕方ない 』

『 良性っぽいから大丈夫 』 と判断せず、必要に応じて組織検査を行うことが重要です。

 

 

 

■■ また、腫瘍の診断だけではなく、『 どこまで広がっているのか 』を確認することも、治療方針を決めるうえで非常に重要です。

 

 

 

■ 今回も、生検でしこりの正体を確認すると同時にCT検査を行ったことで、広がりを把握したうえで切除することができました。

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

 

・ 高齢犬の口の中のしこりには、さまざまな病気がある

・ 見た目だけでは、良性か悪性かを判断できない

・ 細胞診が難しい場合には、組織生検が有用

・ CT検査で、しこりの広がりや周囲の組織への影響を確認できる

・ 良性腫瘍でも、大きくなることで食事や出血などの問題につながることがある

・ 『 良性だから何もしない 』ではなく、その子の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を考えて治療方針を決めることが大切

 

 

■ 今回のワンちゃんは、口の中のできものによって、ご飯が食べづらくなっていました。

 

 

■■ 幸い悪性腫瘍ではありませんでしたが、『 良性だったから安心 』で終わらせず、今後起こり得るトラブルまで考えて治療することが大切です。

 

 

『 口の中にできものがある 』

『 最近、ご飯を食べづらそうにしている 』など、気になる変化がありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

獣医師 土屋優希哉

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