【こんな症例も治りますシリーズ 601】 犬の『 片側性の下顎後方の皮下腫瘤 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、顔面を横切りにした首のCT画像です。 左右の黒円は、中耳です。

1)黄色の*印の部位は、腫れている『下顎リンパ節炎』です。

2)画像の向かって左が、犬の右側です。

3)よって、*印は、『右側下顎リンパ節炎』です。

 

 

 

 

犬 ミックス犬 3歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 震えて元気、食欲がない。 他院で治療するが治らない 】という事で来院されました。

 

 

 

◆◆ 血液検査では、炎症マーカーであるCRP値が検査上限を超えた最高値になっています。

 

■ また、体温は40.1度と発熱がありました。

 

 

■ 触診をしてみると、右側の首の部分で痛がりました。

 

 

■ また、下顎の部分に直径が2センチほどのシコリがあります。

 

 

 

◆◆ レントゲン検査、腹部超音波検査では著変ありませんでしたが、このような発熱は全身のどこかで炎症が起こっている可能性があります。 

 

 

 

 

※ 『 首の部位の異常 』という一か所の部位の異常に目を奪われないで、フラットな気持ちで情報を集めて診断を進めるのが、アメリカ式獣医学の特徴です。

 

 

 

 

 

■ 一般的な血液検査では異常が出にくいが、腹腔内で炎症が起こっている可能性の排除のため、そのような時に一番起こりやすい『 膵炎の否定 』のため、院内検査で分かる膵臓炎症検査(C-PLI)を行いましたが、陰性でした。

 

 

 

 

■■ どうやら炎症の原因は、『 首のシコリの炎症 』が中心のようです。

 

 

 

■ 下顎後方の部分なので、可能性としては『 右側の下顎リンパ節炎 』か『 唾液腺炎 』が考えられました。

 

 

 

■ 解剖学部位は、お互いが近い場所にある『 コリコリした組織 』で、触診では見分けにくい有名な組織です。

 

 

 

◆◆ 確定診断のため、『 CT検査 』と同時に『 針細胞生検検査 』を行うこととしました。

 

 

 

■ CT検査結果は、『 右側下顎リンパ節の腫脹 』が認められました。

 

 

■ 針細胞生検検査では、『 炎症細胞 』が認められました。

 

 

★★★ 年齢および、諸検査の結果から、総合的な診断は、『 右側の下顎リンパ節炎 』の疑いが強いと判断しました。

 

 

 

 

■■ リンパ節炎が起こる原因としては、自己免疫性と感染性が挙がります。

 

 

 

■ 感染性は、ウイルスや細菌、また口腔内細菌も考えられます。

★ しかし、CT検査や口腔内検査を行っても、軽症な歯周病はあるが、中等症以上の歯周病はなく、今回の『 巨大な下顎リンパ節炎 』を起こす口腔内疾患とは判断しにくいものでした。

 

 

 

 

■ 原因の特定は難しく、抗炎症剤と抗生剤を使用して治療を行ったところ、一週間ほどですっかり元気になりました!

 

 

 

■ 炎症や痛みがあった右側下顎リンパ節も、通常の大きさになりました。

 

 

 

■ 今後も再発がないか、しっかり経過を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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