【こんな症例も治りますシリーズ 600】 犬の『 悪化した肛門腺炎 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、『肛門周囲瘻』です。

■ 肛門の病気は数多く遭遇します。

■ 今回の『肛門腺炎・肛門腺化膿』に少しだけ似ているが、治療方法が全く違う病気が、写真の『肛門周囲瘻』です。

 

 

参照サイト:

https://00m.in/ndSMH

 

犬 チワワ 10歳 オス(去勢手術済み)

【 床にお尻をこすり付ける 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 1週間前にトリミングで肛門腺を絞ってもらったのですが、3日後からお尻を床にこすり付けるようになり、だんだん頻繁にするようになってきた 』とのことで来院されました。

 

 

■ ワンちゃんには、スカンクのように、悪臭を放つ一対の分泌腺である肛門腺があります。

 

 

 

 

★ 肛門腺の役割は、縄張りの『 マーキングに使う、その犬特有のニオイ油 』と言われています。 肛門腺の袋は『 肛門嚢 』と言います。

 

 

 

■ 外分泌腺ですので、毎日のように分泌物が生産されて、その内容物は、普通、ウンチをする際や、興奮した時に、導管と呼ばれる管を通って、肛門近くの開口部から排出されます。

 

 

 

■ ただ、肛門嚢の導管がなんらかの原因で閉塞したりすると(例えば、元々、内容物がドロッとした子、慢性的な軟便、または下痢を起こしていて、肛門周囲が汚染されている子、また、肛門括約筋などの筋肉の緊張力が低下しやすい子)、嚢内に分泌物が充満し、そこに細菌感染が生じると、肛門嚢炎になります。

 

 

 

◆◆ 症状としては、犬は肛門に不快感を覚え、気になるため肛門を舐めたり、咬んだり、肛門を床に擦りつけたり、自分の尾を追いかけるなどの仕草をします。

 

 

 

■ 肛門腺炎が進行すると嚢内が化膿し、袋が破れてしまい、その成分が皮膚の下に瘻管を作って、肛門付近の皮膚が破れて出血してしまう場合もあります。

 

 

 

■■ 地面や床に肛門部をこすり付ける特異的な姿勢が見られれば、ほぼ本症と診断できますが、尾を持ち上げ、突出した肛門両側に膨らんだ肛門嚢を手で直接触れることによって確定診断をします。

 

 

 

 

■ 治療としては、分泌物の排泄介助と、初期であれば抗炎症剤・抗生物質の外用薬を処方します。

 

 

■ 中等症の肛門腺化膿は、それだけでは治らない事が多いので、短期間に何度も通院していただき肛門腺分泌物を排泄させて、早めに炎症物質を出してあげます。 さらに、内服療法も併用します。

 

 

■ また、膿が溜まって痛みが激しい場合は内服療法に加え、用手法で分泌物が出ない時には、一時的に外科的に局所麻酔をして、そこに数ミリ切開して排膿と洗浄薬剤注入を行います。

 

 

 

★★★ そして、あまりに何度も繰り返すようであれば、外科手術で肛門嚢自体を取る療法をお勧めします。 この外科療法は、慣れている獣医師に任せた方が良いと思います。

 

 

 

★ 当院には、他院で肛門腺切除手術を失敗して腺組織が取り残された事で、肛門周囲がヒドクなってしまったワンちゃんの再手術経験も複数あります。

 

 

★ この手術は、成功するコツがありますので、それを知っている動物病院に任せた方が良いと思います。

 

 

 

◆◆ さて、このワンちゃんの場合、尾を持ち上げて肛門嚢を触ってみると、両側ともぷっくりと膨らんでいて、その箇所(肛門の四時と八時の方向)を指で掴み、奥から手前に押し出していくと大量の薄黄緑色の分泌物がでてきました。

 

 

 

■ 幸い、中等症の肛門嚢炎であったことから、上記にあるような適切な治療をしました。

 

 

 

■ 1週間後、通院していただいた甲斐があり、ほぼ治りました。

 

 

■■ 肛門腺炎は再発が多い病気のため、重症化する前に診てもらうようにしましょう。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

 

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