【こんな症例も治りますシリーズ 584】 犬の『 セカンドオピニオン診療の低分化型の消化器型リンパ腫 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、この症例のCT画像です。

■ 盲腸周囲に腫瘍が見えます(黄色の*印のところ)。

■ 他にも、小腸と大腸の複数の腫瘍が見えます。

 

犬 ゴールデンリトリバー 10歳 メス(避妊手術済)

 

 

【 下痢、嘔吐が続いて、食欲がない 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 3日前から、下痢と嘔吐が続き、近くの動物病で下痢止めを処方してもらったのですが、治らず、別の病院で超音波検査をしたところ、腹腔内のリンパ節が大きくなっていると言われました。でも、そこでは詳細な検査はできないとのことでしたので、インターネットで調べて、こちらに来ました 』とのことでした。

 

 

■ リンパ腫は、リンパ球と言われる細胞が、いろいろな部位で腫瘍化し、たくさん増えてしまう病気です。

 

 

 

■ その中でも犬の消化器型リンパ腫は、胃、小腸、大腸といった消化管、また腸間膜リン パ節や肝臓など消化器系臓器に発生します。

 

 

 

★ その為、症状としては嘔吐や下痢が生じ、それにより元気や食欲の低下、体重減少がみられます。

 

 

 

 

★★ また、この疾患はどの犬種でも、何歳からでも発症する可能性がありますが、やはり高齢犬に多く、ゴールデンレトリバー、ビーグル、プードル、シェパードが好発犬種としてあげられます。

 

 

 

■ また、検査としては、全身状態やリンパ腫の発生状態を調べるため、消化器型リンパ腫の場合、血液検査、レントゲン検査、超音波検査やCT検査を行います。

 

 

 

■ また腹腔内の腫瘤や腫大化したリンパ節に対しては、針を刺して細胞をとる検査(細胞診)を行い、リンパ腫かそうでないか、またリンパ腫の悪性度として、低分化型(高悪性度)か、高分化型(低悪性度)かを判定します。

 

 

 

■ そして、低分化型リンパ腫の場合は、抗癌剤の反応は良いので、一種類だけあるいは複数の抗がん剤の併用による化学療法を用います。

 

 

 

 

 

 

◆◆ さて、このワンちゃんの場合、血便検査、血液検査、レントゲン検査及び腹部の超音波検査を行ったところ、血便の他、血液検査では軽度の貧血、アルブミンの低下が見られ、超音波検査では回腸壁肥厚、腸管膜リンパ節の腫大及び回盲部に腫瘤が認められました。

 

 

 

 

■ そこで、腫大した腸間膜リンパ節と回盲部の腫瘤に対して、細胞診を行うとともに全身への転移(特に脾臓、肝臓)を調べるためCT検査も実施しました。

 

 

 

 

■ その結果、低分化型の消化管型リンパ腫と診断されました(脾臓、肝臓等に腫瘍はありませんでした)。

 

 

 

 

 

 

 

■ 一般に、低分化型リンパ腫には、抗がん剤としてシクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビン クリスチン、プレドニゾロンを含むCHOP療法と呼ばれる多剤併用化学療法が使用されます。

 

 

 

 

■ 一方で複数の強力な抗癌剤を併用して使用するため、副作用(特に消化器毒性)の発症が考えられます。

 

 

 

 

 

■ そこで、あまりワンちゃんに負担をかけたくないという飼い主様の希望もあり、まずは比較的、消化器毒性は弱いと言われている抗がん剤と、ステロイド剤の併用を開始することにしました。

 

 

 

■ 1週間後、来院してもらうと、幸いにも抗がん剤が奉功して、『 下痢や嘔吐はなくなり、食欲も出てきて、食事もしっかりとれるようになった 』と嬉しそうに話して下さいました。

 

 

 

 

 

■ ただ、今後は、今回の抗がん剤だけでは効かなくなり、症状が再発する可能性が考えられるため、多剤併用化学療法への切り替えを含めこのまま抗がん剤による治療を継続するか、あるいは化学療法を中断して、副作用のない緩和療法にするかの判断が必要となります。

 

 

 

※ いずれにしても飼い主様が、このワンちゃんのためを想い、どの様にしてあげるのが一番かを考えていただくことがとても重要です。

 

 

 

※ 我々は一緒になって考え、それをどこまでも尊重していければと思っています。

 

 

 

 

★ ちなみに、当院の緩和療法としては、本来、動物に備わっている免疫力や自然治癒力を高めることで抗腫瘍作用を向上させる、またQOAL(動物の生活の質)を維持できる様にすることを目的に行う「ドイツ自然療法」や「オゾン治療」などがあります。

 

 

 

■ これからも、飼い主様とともにワンちゃんの健康と幸せを見守っていけたら思います。

 

 

 

獣医師 泉 政明

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