【こんな症例も治りますシリーズ 552】 猫の『 秋のアレルギー性皮膚炎 』も 適切な診断と治療で治します
↑ 上の写真は、ノミの卵と糞です。
■ ノミの卵は、『白の楕円形』です。
■ ノミの糞は、『黒の曲がった形』です。
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★ ノミの糞は、『猫ちゃんの皮膚の上』で見る事が出来ます。
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★ また、ノミの卵と糞は、この猫ちゃんの診察時に『診察台の上』で見ることができます。
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★ しかし、カーペット、寝具、芝生などの表面で見ることは、ほとんど不可能です。
参照サイト:
https://bit.ly/3AI9Kan
猫 ミックス猫 5歳 オス(去勢手術済・屋外飼育)
【 背中の尻尾の上の所が禿げてきた 】ということで来院されました。
◆◆ 飼主様からお話を伺ってみると『 一週間前から、しきりに背中の尻尾の上の所を舐めていたのですが、気が付くとこんな風に禿げてしまっていて、上の方に赤いブツブツができているんです。 』とのことでした。
■ 更に、お話を伺ってみると、このネコちゃん、普段は外にいて、ご飯と寝に帰ってくること。 ノミ・ダニのお薬は、市販のモノを付けているとのことでした。
◆ この皮膚炎パターンの分布位置は、『 ノミアレルギー性皮膚炎 』に似ています。
※ 身近にいるノミには、『 犬ノミ 』と『 猫ノミ 』がいます。
★ 『 犬ノミ 』は、犬に感染して、猫には寄生しないが、『 猫ノミ 』は犬や人にも寄生するので、要注意です。
※ また、屋内にノミが侵入すると、『 卵 ⇒ 幼虫 ⇒ さなぎ 』という時期を温かい室内で過ごすので、秋・冬の期間でも生きており、『 365日間予防が必要 』というのが常識になっています。
■■ 猫のノミアレルギー性皮膚炎とは、猫ノミが寄生して吸血した際に出す唾液が『 アレルゲン(アレルギーの源) 』となって、激しいかゆみを発症させるものです。
■ そのため、症状としては、掻いたり咬んだりすることによる脱毛や出血、また、赤い点状のブツブツがみられます。
■ また、皮膚炎が起こりやすい場所は、前述しましたが『 尾に近い背中の後方エリア 』です。
■ ノミアレルギー性皮膚炎は屋外に出る機会のあるネコちゃんを中心に、室内ネコでもみられますが、1歳以上のほぼすべての年齢で起こり、ノミの数が多くなる夏~秋にかけて発症も増えると言われています。
◆◆ なぜ、屋内にいる猫ちゃんにノミが感染すると思いますか?
◆ ヨーロッパの研究では、『 飼主様が屋外にいる猫ちゃんの近くや、知人の猫のノミ予防が出来ていない家に訪問して、飼主様が足元に付けて帰ってくる 』ことで、屋内生活の猫ちゃんにも感染する。
◆ あるいは、動物病院の待合室で『 ノミ予防をしていない猫ちゃん 』から感染する。
◆ この2つのケースが実際に多いのだそうです。
※※※ 当院は、一日に複数回の院内消毒に努めておりますが、実際には、『 ご自分の猫ちゃんのノミダニ予防を365日間していただくしかない 』と考えております。
■■ ここで、動物病院内で飼主様から受ける≪ あるある ≫質問です。
■(1)なぜ、市販のノミダニ予防薬を付けているのに、感染しているのですか?
⇒ 営業妨害になるかもしれませんが、『 市販のノミダニ予防剤で、効果が十分にある種類に出会った事がありません 』。
⇒ 薬の濃度が薄い、薬の種類が効果的でない、などが考えられます。
⇒ 動物病院専用で処方するノミダニ予防薬には、効果がある薬が多いです。
■(2)家の中の消毒などは?
⇒ 室内の畳やカーペット、布団、マットなどを清掃し、ノミの卵や幼虫、サナギを駆除し、室内環境を清潔に保つようにすることです。
⇒ その際は、たぶん薬品を専門業者さんが使うと思いますので、猫ちゃんや動植物を室内から避難させて下さい。
⇒ 一般の方がノミ駆除をしながら掃除できる方法もあるのですが、飼主様が薬品を間違って使っても私共は責任が取れないので、ここでの紹介は控えさせて下さい。
■(3)ノミは、人間に伝染するのでしょうか?
⇒ ノミを介してヒトにも感染する『 猫ひっかき病 』にも、注意が必要です。
⇒ ヒトにうつると頸部のリンパ節に痛み・腫れが出るほか、発熱するケースもあり、重篤な場合、麻痺や脊髄障害になる場合もある恐ろしい病気です。
◆◆◆ さて、このネコちゃんの場合、まず傷のついた患部を消毒した後、動物病院用ノミ・ダニ駆除剤(市販のモノを付けていたとのことですが、恐らく効果が弱かったため、ノミが寄生したのでしょう)と、ステロイド剤を処方しました。
■ 二週間後、再度、来院していただいたところ、禿げていた部分にはうっすらと毛が生えていて、赤いブツブツもなくなっていました。
■ 飼い主様も『 あれから、全然、舐めなくなって、すっかり良くなりました。 』と、うれしそうにお話下さいました。
■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
獣医師 泉政明
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