【こんな症例も治りますシリーズ 481】 犬の眼内メラノーマ(悪性黒色腫) も適切な診断と治療で治します
上のイラストは、眼の中に出来るメラノーマの位置です。
※ 実際の写真ですと、グロテスクな画像になるので、避けました。
★ イラストは、ヒトの眼内メラノーマの説明用ですが、黒い塊の部分が好発部位です。
ブドウ膜と言う部分は、メラニン色素が豊富なのでメラノーマが出来やすいのです。
参照サイト:
https://mayocl.in/3gUWBR9
犬 アメリカンコッカースパニエル 12歳 メス避妊手術済
【 前の動物病院で緑内障と診断されて治療しているのですが、あまり良くならない 】とのことで来院されました。
◆◆ この子の眼圧と眼の硬さを測定してみると、右目が56mmHgで非常に硬い状態でした。
■ 通常、ワンちゃんの眼圧の30mmHg以上は『 緑内障 』と診断されます。
※ 緑内障は、単純な原因だけでなく、別の複数種類の原因によって起こる事もあります。
■ この子の右目は、かなりの痛みがあり、食欲も落ちている様です。
■ 右目は赤目、すなわち充血がかなり重度で、眼の全体が眼球炎も起こしている様子です。
■ 『 点眼を行い、様子を見ている 』ということでしたが、上手く治っておらずコントロールができていません。
■ しかも、検査を進めてみると『 視覚も消失 』しています。
■ 眼底検査という、特殊なレンズを使い眼の内部を診る検査を行ったところ、『 右眼球内にしこり(腫瘤)の病変 』を認めました。
■ 続いて、眼球内の特殊エコー検査を行い、眼の全体像を確認したところ『 右眼球内の瞳孔の部分に占拠性病変、すなわち腫瘍を疑う所見 』を認めました。
■ 眼球内腫瘍による『 続発性の緑内障の可能性が高い 』です。
■ 視力も消失し、点眼治療による内科管理もできていないため、外科手術による右眼の眼球摘出術が適応になります。
■ そこで、術前に全身状態の検査を行い、安全な全身麻酔下で、眼球摘出手術を行いました。
■ 右眼球の病理組織検査を行ったところ、診断は『 メラノーマ(悪性黒色腫) 』でした。
■■■ メラノーマというと、かなり悪性度の高い腫瘍を思い浮かべますが、メラノーマはカラダの発生部位により、その後の挙動(悪性度や様子)が異なります。
■ 口腔内や爪床に発生したメラノーマは悪性度が高く、広範囲の切除が必要になり、さらには全身転移に注意が必要です。
■ しかし、眼内に発生するメラノーマは多くの場合で良性であり、隔絶された部位であるため滅多に転移は起こしません。
■■ 手術後、この子は痛みもなくなり、食事もよく食べる様になりました。 今ではとても元気に過ごしてくれています。
■ 気付きにくい発生部位でしたが、しっかり診断を行うことができ、QOL(生活の質)を回復できた症例でした。
獣医師 増田正樹
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