【こんな症例も治りますシリーズ 477】 隠れている病気:甲状腺機能低下症 も適切な診断と治療で治します

ワンちゃんの甲状腺機能が低下すると、複合疾患になりやすいです。 甲状腺の位置(ピンク色の部分)のイラストです。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3HccGNB

 

 

犬 9歳 オス(未去勢手術)

 

【 一昨日から食欲がなく寝たきり 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

◆◆ 来院時は、元気がなく、具合が悪そうな様子でした。

 

 

■ そこで、まず身体検査、血液検査とレントゲン検査をさせて頂きました。 身体検査では肥満、軽度脱水が認められ、血液検査では白血球数増加、総コレステロール、尿素窒素とクレアチニンに非常に高い値が検出されました。

 

 

■ これらの情報より、緊急性の高い症状と判断されたので入院していただき、直ちに静脈点滴を開始しました。

 

 

 

 

■ 静脈点滴により速やかに尿素窒素とクレアチニン値は下がりましたが、元気・食欲の改善は認められず、腎臓病以外に、内分泌疾患(ホルモン分泌)等が疑われましたので精密検査を行いました。

 

 

 

■ その結果、甲状腺ホルモンが低下していて『 甲状腺機能低下症 』が疑われました。

 

 

 

 

■ ワンちゃんには甲状腺、上皮小体、副腎、膵臓などの多様の内分泌腺があり、分泌されるホルモンは生命維持に欠くことができないものです。 内分泌疾患は、これらの内分泌から産生・分泌されるホルモンの異常で起こり、発育、代謝、生殖、皮膚などに様々な症状を発現します。

 

 

■ 甲状腺機能低下症は、甲状腺で産生・分泌されるホルモンの欠乏によりおこります。

 

 

 

■ 原因として、ワンちゃんでは特発性甲状腺委縮とリンパ球性甲状腺炎(自己免疫反応により甲状腺が破壊される)によるものがほとんどとされています。 またクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)などの他の病気が甲状腺ホルモンのはたらきを阻害し、同様の症状を引き起こすこともあります。

 

 

 

■ 症状は無気力、倦怠、元気消失、運動不耐性、体重増加、不整脈、心拍の低下、皮膚炎などが観察されます。血液検査では、総コレステロールや中性脂肪の値が高値を示すことがあります。

 

 

 

■ 甲状腺機能低下症の治療は、体内で生産出来なくなった分の甲状腺ホルモンを内服薬で補っていきます。

 

 

 

 

■ 今回のワンちゃんは、追加検査でクッシング症候群が否定されましたので、甲状腺ホルモン内服薬を処方しました。 すると、翌日から元気食欲が徐々に回復し、2日後には総コレステロール値も低下し退院できるまで回復しました。

 

 

 

■ 急に元気食欲がなくなったり、皮膚に異常が見られたりしたら、当院までご相談ください。

 

 

 

 

 

獣医師 天野 雄策

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