【こんな症例も治りますシリーズ 457】 猫の治りにくい肛門嚢炎(肛門嚢破裂) も適切な診断と治療で治します

肛門腺のイラストです。
肛門の右側は、化膿して破裂した状態です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3eurIj7

 

猫 6歳 メス (未避妊手術) です。

 

 

【 肛門の脇の傷口から膿がでて、傷口がなかなか治らない 】とのことで来院されたネコちゃんです。

 

 

◆◆ 飼い主様にお話を伺うと、2ヶ月ほど前から肛門の脇が腫れると、急に元気・食欲がなくなり、しきりに患部を舐め始めるのですが、1~2日後には患部が、ぱっくりと開き、そこから膿がでているとのこと。

 

 

■ 一度、傷口がひらき、中の膿が出終わると元気・食欲がもどるのですが、だんだん傷口とふさがり、5日間くらいでまた腫れてくると、元気・食欲がなくなるとともに肛門周囲を舐めだし、再び傷口が開く、をずっと繰り返していたとのことです。

 

 

 

■ その間、近院で診てもらったところ【肛門嚢炎】と診断され、外用薬での治療を続けてきましたが、なかなか良くならないとのことで、ホームページをみて、当院で診てもらうことにしたとのことでした。

 

 

 

 

 

★★ 通常は、当院でしたら、犬猫の『 肛門嚢破裂 』は再発を防ぐために外科の肛門腺摘出手術を行いますが、今回は内科治療を御紹介致します。

 

 

★ この手術方法は、ポイントを知らない獣医師が行うと、難易度が高い外科の分野に入ります。 すなわち、失敗しやすい手術です。 当院では、独自の方法を開発して、失敗のない手術を実施しております。

 

 

 

■ さて、当院でも詳しくこの子の患部を診させていただいたところ、肛門嚢の導管開口部付近にぱっくりと傷口がひらき、中から膿が出ていました。

 

■ 症状と傷口の部位から、肛門嚢炎に化膿菌が関与し、導管が閉塞したため、嚢内が膿で充満し、膿瘍となり、さらに肛門嚢の皮膚の一部分が破れて穴が開き、膿の排出が起ったと考えられました。

 

 

 

 

■■ ネコちゃんやワンちゃんには、スカンクのように、悪臭を放つ一対の分泌腺である肛門嚢があります。 その内容物は、普通、ウンチをする際や、興奮した時に、導管と呼ばれる管を通って、肛門近くの開口部から排出されます。 ただ、肛門嚢の導管がなんらかの原因で閉塞したりすると(例えば、元々、内容物がドロッとした子、慢性的な軟便、または下痢を起こしていて、肛門周囲が汚染されている子、また、肛門括約筋などの筋肉の緊張力が低下しやすい子)、嚢内に分泌物が充満し、そこに細菌感染が生じると、肛門嚢炎になります。

 

 

■ さて、このネコちゃんの場合、肛門嚢炎が進行し、膿瘍が起き、さらに肛門嚢が破裂していたことから、患部周辺だけでなく、傷の奥も集中的に消毒し、また自然と傷口が盛り上がるよう、肉芽組織増殖薬を塗りました。 さらに、症状を繰り返していることから、排出された膿の菌培養検査から、原因菌とそれに効く抗生剤を特定し、内服薬として処方しました。

 

 

 

■ 数週間後(その間、首にしたカラーが外れて、傷口を舐めてしまったため、傷口が開いてしまうことが何回かありましたが)、すっかり傷口はふさがり、肛門周囲を舐めたり噛んだりしなくなったこと、また元気・食欲が落ちることもないことを、飼い主様がうれしそうにお話してくれました。

 

 

 

 

★★ 上で述べたように、当院では再発防止の外科手術をお勧めしております。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

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