【こんな症例も治りますシリーズ 412】 ワンちゃんの顔の腫れを伴う重症歯周病(重症歯槽骨融解症) も適切な診断と治療で治します

左の写真を良く見て下さい。 向かって左側の目の下が腫れているのが分かりますか?
右は、その時のCT画像です。 向かって左側が腫れている像です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3n0KZhn

 

 

イヌ ミニチュアダックスフンド 12歳 オス(去勢手術済)

【 数日前から顔が腫れている 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

 

■ 初診の際に、右目の下と口の間が腫れており、触診してみると軟らかさがあり、ゴツゴツした触感は無く、『上顎骨の異常』を疑いました。

 

■ そこで、『口腔内検査』という歯や歯茎の状態を診て、バイキンが無いかの検査を行いましたところ、奥歯である臼歯に重度な歯石付着と、肉眼でもわかる『歯周病』が仮診断できました。

 

 

 

■ 飼主様と話し合い、初回は抗生物質の処方のみさせて頂く事になりました。

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★ 本来は、問題点に伴う鑑別診断リストを列挙して、その精査をするために除外診断を行わなければならない状況です。 特に、顔、特に口には腫瘍(良性・悪性共に)が出来やすいので、その病気の否定も重要な診断行程となります。

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★ 高齢の動物さんの飼主様は、『 積極的に検査をして下さい 』とおっしゃられる方は少ない傾向にあり、『 動物に負担が少ない治療だけして下さい 』と言われる方が多いと思います。

 

 

※ 当院は飼主様の心に寄り添う医療を行っておりますので、一度は時間的に余裕がある病気だと想定される時には『 では、治療だけをしてみましょう 』となります。 しかし、危ない可能性がある病気の子には、除外診断で正確な診療を行う事をお勧めします。

 

 

■■ 残念ながら、このワンちゃんは抗生物質治療で一度は落ち着いたのですが、すぐに再発しました。

 

■ そこで、次に【 正式な検査を行って、正しい診断 】をする事になりました。

 

 

■ 顔のレントゲンを撮ったところ、歯根膿瘍による上顎骨の歯を支える歯槽骨の融解が見られました。

 

 

★ 歯根膿瘍とは、要するに虫歯のバイ菌が、歯の根っこから入り込んでしまい顎の骨を溶かしてしまったということです。

 

歯茎の部分は、巾着のように締め付けられているので、化膿したバイキンが目と口の間にある上顎洞に溜まってしまい、顔を腫れさせたのです。

 

 

 

 

■ この病気の時には、本来はCT検査を行えば病巣を立体的に診断できますので、炎症の拡がり具合も確認出来ます。

 

■ 上顎洞化膿を伴う歯根膿瘍ですので、放置しておくと、眼の下から皮膚を破裂させて化膿物質がジュクジュクと出てくる可能性があります。 それがいつまでも続くのです。

 

 

■ そこで、飼主様に理解して頂き【 正しい治療 】としての原因となっている歯科治療と、上顎洞炎の治療を麻酔を用いて同時に行いました。

 

 

★ いわゆる口腔内外科手術です。

 

 

 

 

★ 手術は

 

1)他の部分に歯周病予備軍が無いかの検査。

 

2)歯石除去を行う。(当院は、他院とは違った高レベルの歯石除去術を行いますので、再発までの期間が遅いのです。)

 

3)悪い歯を抜く。

 

4)抜歯部位からの上顎洞アプローチ手術。(あるいは、皮膚からのアプローチも行う事があります。)

 

5)歯を抜いたところに骨補填治療を行う。

 

6)フラップ縫合などで、歯茎の縫合を行い、歯周病菌や食物が再度侵入しないようにします。

 

7)軽度歯周病、歯肉炎の治療を行い、

終了としました。

 

 

■ 本来は、当院では見逃しが無いように、『デンタルレントゲン検査』という、デジタル処理された歯科用レントゲンで術前に検査を行いますが、今回はそこまで行わない事になりました。

 

■■ 通常、高レベルの歯石除去を行っても、そのままいつも通りのケアーをしていれば、歯石が再度付着しやすくなります。

 

■ 今後の歯のケアが非常に重要です。

⇒ 当院には、歯科ケアーのプログラムがあります。 それに沿って実施して頂ければ、8割の方は歯石の再付着を防ぐことが出来ています。

 

■ 実際に、この飼い主様は毎日歯磨きをする事が出来るようになりました!

 

今後とも綺麗な歯で過ごしていけると良いですね。

 

 

獣医師 落合勇吏

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