【FIP専門治療センター・セカンドオピニオン診療】 無料FIP治療薬プロジェクト / 皆さんにも役立つ 情報

 

↑ 上の写真は、猫の小腸の化膿性リンパ節炎のエコー画像です。
◆ この腫大したリンパ節の横には、前腸間膜静脈(*)が認められる。
◆ 最も背側に位置する空腸リンパ節は著明に腫大し、低エコー性を示すとともに、その頭側極(白矢印)は境界不明瞭な無エコー域を呈し、わずかに分葉状を呈している。
◆ リンパ節周囲の脂肪組織は高エコー性であり、脂肪織炎の所見を示唆している(白矢印頭)。

 

 

参照サイト:

https://00m.in/bwajh

 

 

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■■■ 【思い込みは危ない! 症例情報】 去勢手術前の検査でFIPが見つかった猫の一例

 

 

今回は、去勢手術の術前検査をきっかけにFIP(猫伝染性腹膜炎)が判明した猫ちゃんをご紹介します。

 

 

◆◆ 去勢手術のため来院

 

 

症例は、8ヶ月齢のサイベリアン、男の子です。

 

■ 去勢手術を希望されて来院しました。

 

来院時は、

 

1) 元気・食欲ともに良好

2) 一般状態に大きな問題なし

3) 見た目にも特に気になる症状なし

という状態でした。

 

 

 

■ 飼い主様から見ても特に体調が悪い様子はなく、診察時にも大きな異常は認められなかったため、問題なく去勢手術を受けられるものと思われました。

 

 

■ そこで、通常通り手術前の血液検査を行いました。

 

 

 

 

 

◆◆ 術前血液検査で気になる異常

 

 

■ ところが、血液検査を確認すると、いくつか気になる異常が見つかりました。

 

■ 軽度の貧血に加えて、白血球数の上昇を認めました。

 

■ さらに詳しく血液検査を確認すると、A/G比が0.42と低下していました。

 

 

### A/G比とは、血液中のアルブミンとグロブリンのバランスを見る指標です。

 

◆ 猫では、FIPなどの強い炎症性疾患でグロブリンが増加したり、アルブミンが低下したりすることで、A/G比が低下することがあります。

 

◆ もちろん、A/G比が低いからといってFIPと診断できるわけではありません。

 

 

 

 

 

■■ しかし、

『 元気な8ヶ月齢の猫なのに、貧血・白血球増加・A/G比0.42 』

 

という結果は、去勢手術をそのまま行うには少し気になる所見でした。

 

 

■ そこで急遽、飼い主様に検査結果をご説明し、手術を延期して精密検査を行うことにしました。

 

 

 

 

■■ 超音波検査でリンパ節の腫大を確認

 

 

■ 追加検査として腹部の画像検査を行ったところ、空腸リンパ節(お腹の中の腸のそばにあるリンパ節)が約2cmまで腫大していることが分かりました。

 

 

■ さらに、ごく軽度ではありましたが、腹水も確認されました。

 

 

■ この時点で、

1) FIP

2) リンパ腫

3) その他の炎症性疾患

などを鑑別診断リストに挙げました。

 

 

 

 

■ 特に8ヶ月齢という年齢や血液検査の所見、リンパ節腫大、軽度腹水などを総合すると、リンパ腫よりもFIPを優先して考える必要がある状況と判断しました。

 

 

 

 

■■ リンパ節の検査とFIP検査

 

 

■ そこで、腫大していた空腸リンパ節に対してFNA(細胞診)を行い、病理検査およびFIP関連のPCR検査を実施しました。

 

 

■ また、猫コロナウイルス(FCoV)抗体価も測定しました。

 

 

 

◆◆ 検査結果は、

 

1) FCoV抗体価 : 高値

2) リンパ節病理  : 過形成

3) FIPV―PCR: 陽性

という結果でした。

 

 

■ リンパ節の細胞診・病理検査では、リンパ腫を強く疑うような所見ではなく、反応性の過形成が主体でした。

 

 

 

 

■■■ これらの検査結果と、血液検査・画像検査を含めた臨床所見を総合的に判断し、FIPのMIXタイプ(混合型)と診断しました。

 

 

 

 

◆◆ 元気だったのにFIP ?

 

 

■ 今回の症例で特に印象的だったのは、飼い主様から見てほとんど症状がなかったことです。

 

 

◆ FIPというと、

「食欲がない」

「痩せてきた」

「発熱が続いている」

「お腹が大きくなってきた」

といった明らかな症状をイメージされる方も多いと思います。

 

 

 

◆ しかし、今回の猫ちゃんは元気・食欲ともに良好で、まさに「健康そうに見える猫」でした。

 

 

◆ それでも体の中では、リンパ節の腫大や炎症反応など、FIPを疑わせる変化が進行していました。

 

 

 

 

◆◆ もし、そのまま麻酔をかけていたら?

 

 

■ 今回、術前検査によって異常を発見できたことで、去勢手術を延期し、FIPの精密検査・治療へと切り替えることができました。

 

■ もし術前検査を行わず、そのまま全身麻酔をかけて手術をしていた場合、基礎疾患が存在する状態での麻酔や手術侵襲をきっかけに、状態が悪化していた可能性も否定できません。

 

■ 少なくとも今回の症例では、手術を急がずに精密検査へ切り替えたことは非常に重要だったと考えています。

 

 

 

 

◆◆ 治療開始後は順調に改善

 

 

◆ FIPに対する治療を開始したところ、経過は良好でした。

 

■ その後の血液検査では、異常を認めていた項目が徐々に正常化。

 

■ さらに、腫大していた空腸リンパ節も縮小し、正常に近い状態まで改善しました。

 

■ 現在も治療後の状態を確認しながら、慎重に経過を観察しています。

 

 

 

 

◆◆ 術前検査の重要性

 

 

■ 今回の症例では、「去勢手術をするために行った血液検査」が、FIPを発見するきっかけになりました。

 

■ 猫は体調が悪くても、初期にはそれを表に出さないことがあります。

 

■ 特に若い猫では、「元気だから大丈夫」と思っていても、血液検査や画像検査を行うことで初めて分かる病気が存在します。

 

■ 去勢・避妊手術は健康な状態で行うことが前提となるため、手術前に血液検査などの術前検査を行うことは非常に重要です。

 

 

 

 

🌟🌟🌟 今回の症例を通して、「元気そうに見えること」と「体の中に異常がないこと」は必ずしも同じではないということを、改めて実感しました。

 

 

 

◆ 今後も治療後の再発や状態の変化に注意しながら、しっかりと経過をみていく予定です。

 

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

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