【こんな症例も治りますシリーズ 868】『 猫ちゃんの突然の失明(急に目が見えなくなる) 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上のイラストは、今回の猫ちゃんに起きた『 高血圧による網膜剥離 』の解説です。
■ 左側 = 高血圧の猫ちゃんに見られるサインです。物にぶつかるようになる、急に視力が落ちる、瞳孔(ひとみ)が開いたままで反応が鈍い、目が大きく見える など。
■ 右上 = 正常な目と、網膜剥離が起きた目の違いです。高血圧による出血や滲出(しんしゅつ = 血液の成分がしみ出ること)により、網膜がはがれてしまいます。
■ 下段 = 猫ちゃんの高血圧の主な原因(慢性腎臓病・甲状腺機能亢進症・心臓病 など)、診断までの流れ、治療のポイントです。
■ 高血圧は症状が出にくく『 サイレントキラー 』とも呼ばれます。定期的な血圧測定が早期発見につながり、早期発見・早期治療が、大切な猫ちゃんの『 見える未来 』を守ります。

 

猫 サイベリアン 18歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 突然、目が見えなくなった 】ということで来院された猫ちゃんです。

 

 

 

◆◆ 飼い主様からは、

『 朝からなんとなく様子がおかしい 』

『 いつもと違って、家具や物によくぶつかるようになった 』

『 急に目が見えなくなったみたい 』 とのことで、ご相談をいただきました。

 

 

■ 突然、目が見えなくなると『 目そのものに何か問題が起きたのでは? 』と思われる方も多いと思います。

 

 

 

■■ しかし、猫ちゃんの失明には、次のように、さまざまな原因があります。

 

・ 目そのものの病気

・ 脳や神経の病気

・ 高血圧による網膜(もうまく = 目の奥にある、光を感じるうすい膜)の障害

・ その他の全身の病気

 

 

 

■ そのため、『 目が見えない 』という症状だけで原因を決めつけず、全身を検査することが重要です。

 

 

 

◆◆ 検査所見

 

■■ 今回、当院で行った検査では、次の所見が認められました。

 

・ 神経学的な検査 = 視覚(目が見えていること)がないことを示す所見

・ 血圧測定 = 『 高血圧 』を確認

・ 眼底検査(目の奥を見る検査) = 『 網膜剥離(網膜がはがれている状態) 』を確認

・ 血液検査 = 腎数値(腎臓の働きを示す数値)の上昇を確認

・ 甲状腺ホルモン = 正常

 

 

 

◆◆ 今回の失明の原因は?

 

■■ 今回の検査結果から、次の流れが考えられました。

『 腎臓の病気 ⇒ 高血圧 ⇒ 網膜の障害・網膜剥離 ⇒ 急激な視力の低下 』

 

■ 高血圧は、猫ちゃんでは腎臓病などに伴って起こることがあり、重度になると、目だけでなく、脳や心臓など、さまざまな臓器に影響を及ぼします。

 

 

■■ 特に、高血圧による網膜剥離は『 早期に治療できれば視力が回復する可能性がある 』ため、突然の視力低下では、血圧測定と眼底検査が非常に重要です。

 

 

 

 

◆◆ 治療

 

■ 高血圧に対して、降圧薬(血圧を下げるお薬)による治療を開始しました。

 

■ ただし、ここで注意しなければならないことがあります。

 

 

 

■■ 血圧を下げることで腎臓への血流が変化し、『 腎機能が悪化する可能性 』があるということです。

 

■ 今回の猫ちゃんは、もともと腎数値の上昇も認められていました。

 

■ そのため、

・ 血圧をしっかり下げること

・ 腎臓を守ること

 

■ この両方を考えながら、治療を行う必要がありました。

 

 

 

 

◆◆ 治療後の経過

 

■■ 治療開始から約1週間後に再検査を実施したところ、次のとおりでした。

 

・ 血圧は改善していた

・ 心配していた腎数値の悪化は認められなかった

・ 視力も徐々に回復している様子が確認できた

 

 

 

■ その後も治療を継続したところ、約2週間後には、

『 以前とほとんど変わらないように見える 』 というところまで視力が回復しました。

 

 

 

■ 物にぶつかることもなくなり、普段どおりの生活に戻ることができました。

 

 

 

◆◆ この症例から分かること

 

 

 

■■ 今回のポイントは、『 突然の失明は、早期の検査と治療が非常に重要 』ということです。

 

 

■ 高血圧による網膜剥離は、放置すると視力が戻らなくなる可能性があります。

 

 

■ 一方で、今回のように早期に原因を見つけて治療を開始することで、視力が回復するケースもあります。

 

 

■ また、18歳という高齢であることから、

『 年齢のせいかな 』

『 もう目が見えなくなってしまったのだから仕方ない 』 と思ってしまうこともあるかもしれません。

 

 

 

■■ しかし、今回のように『 治療できる原因 』が隠れている可能性があります。

 

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

・ 猫ちゃんの突然の失明には、さまざまな原因がある

・ 高血圧は、猫ちゃんの失明を引き起こす重要な原因の一つ

・ 腎臓病などに伴う高血圧では、網膜剥離を起こすことがある

・ 突然、目が見えなくなった場合は、血圧測定と眼底検査が重要

・ 高血圧による網膜剥離は、早期治療によって視力が回復する可能性がある

・ 降圧治療中は、腎機能の変化にも注意して経過をみる必要がある

 

 

 

■■ 【 急に目が見えなくなった 】 そんなときは、単なる目の病気とは限りません。

 

■■ 特に高齢の猫ちゃんでは、『 高血圧や腎臓病など、全身の病気が目に現れていること 』があります。

 

■ 今回の猫ちゃんも、早い段階で検査を行い、原因を見つけて治療を開始できたことが、視力の回復につながったと考えられます。

 

■ 突然の視力低下や、物にぶつかる・動きたがらないなどの変化がありましたら、できるだけ早めにご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 土屋優希哉

 

 

Page Top