【こんな症例も治りますシリーズ 844】『 ワンちゃんの小さくても悪性度も注意すべき皮膚腫瘍 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、犬の後肢のCT検査画像です。

◆ 黄色の円形部分は、肥満細胞腫が発生している画像です。

 

 

犬 ボストンテリア 7歳齢 メス(避妊手術済)

 

 

【 左後肢の体表に小さなシコリがある(約6mm) 】とのことで来院されました。

 

 

 

◆◆ 小さいシコリを早く見つけて来院されて良かったです。 順番に読み進めていくと、この意味が分かります。

 

 

 

 

 

■■ 経過および検査所見

 

 

■ 左後肢の皮膚に認められた6mmほどの小さな塊に対し、まずは細針吸引細胞診(FNA)を実施しました。

 

 

■ 細胞診の結果、特徴的な顆粒を持つ肥満細胞が多数確認され、**肥満細胞腫(MCT)**と診断されました。

 

 

■ 肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍の中で最も一般的な悪性腫瘍の一つであり、その挙動は「低グレード(良性に近い挙動)」から「高グレード(極めて攻撃的)」まで多岐にわたります。

 

 

 

★ ボストンテリアは本腫瘍の好発犬種として知られていますが、一方で比較的低グレードのものが発生しやすい傾向も報告されています。

 

 

■ 今回はしこり自体は小さいものの、悪性腫瘍としての性質を考慮し、手術前にCT検査を実施しました。 CT検査の目的は、腫瘍が周囲の組織へどの程度根を張っているか(深部浸潤)、および近接するリンパ節や腹腔内臓器への転移がないかを精査することです。 

 

 

■ 検査の結果、明らかな浸潤や遠隔転移の所見は認められなかったため、外科的切除による根治を目指しました。

 

 

 

 

■■ 治療内容

 

 

■ 診断に基づき、腫瘍の周囲を十分に離して切除する拡大切除を実施しました。肥満細胞腫の外科手術では、目に見える腫瘍だけを切り取るのではなく、周囲の正常に見える組織を含めてマージン(境界線)を確保することが再発防止のために不可欠です。

 

 

■ 特に後肢は皮膚の余裕が少ない部位であるため、十分なマージンを確保しつつ、術後の歩行に支障が出ないよう形成外科的に工夫をしながら慎重な閉創を行いました。

 

 

 

 

 

■■ 治療後の変化および病理検査結果

 

 

■ 摘出した組織の病理組織学的検査の結果、以下の診断が得られました。

 

 

1. 完全切除(マージンクリーン): 腫瘍の端から切除面まで十分な距離があり、取り残しがないことが確認されました。

 

 

2. 脈管浸潤なし: 血管やリンパ管の中に腫瘍細胞が入り込んでいる所見はありませんでした。

 

 

3. 低グレード(Low Grade): 細胞の異型性や分裂像が少なく、再発や転移のリスクが低いタイプであると判定されました。

 

 

■ これらの結果から、今回の症例における予後は極めて良好であると考えられます。 現在は抜糸も終え、術後の経過は非常に順調です。

 

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

 

■ 今回の症例で最も重要なポイントは、**「6mmという極めて小さな段階でご家族が異変に気づき、早期に適切な検査・治療を行えたこと」**にあります。

 

 

■ 肥満細胞腫は「グレード」も重要ですが、何よりも「大きくなる前に、かつ転移する前に切除すること」が完治への近道です。

 

 

■ ボストンテリアやパグ、フレンチブルドッグなどの好発犬種に限らず、体に小さなシコリを見つけた際は、「ただのイボだろう」と楽観視せず、お早めにご相談ください。

 

 

■ CT検査を含む精密なステージングと適切な外科処置が、愛犬の健やかな未来を守ることに繋がります。

 

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

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