【こんな症例も治りますシリーズ 652】 『 猫の高脂血症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、猫の高脂血症の血液血清です。

■ 左は、正常の血清です。

■ 右は、高脂血症の血清です。

 

参照サイト:

https://00m.in/oAyFP

 

猫 ミックス猫 9歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 定期血液検査の結果が高脂血症 】ということで来院されました。

 

 

 

◆◆ このネコちゃんは、喘息の治療にプレドニン(副腎皮質ホルモン・ステロイド)を飲んでいるため、半年に1回ほど定期的に血液検査をしているのですが、飲み始めてから約2年過ぎたころから 血中の中性脂肪(トリグリセリド:TG)、コレステロール(T.Cho)の値が高くなったため、治療を開始することにしました。

 

 

 

■ 高脂血症とは、血中のTGまたはT.Cho、あるいはその両者が増加して高い値を示している状態をいいます。

 

 

 

■ 高脂血症は、原発性(一次性)と続発性(二次性)に分けられ、原発性では原発性高TG血症(ミニチュア・シュナウザー)、原発性高Cho血症(シェットランド・シープ ドッグなど) 、猫の特発性TG血症、猫のリポ蛋白リパーゼ欠損症があります。

 

 

 

■ 一方、続発性では、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病などでみられます。

 

 

 

■ またグルココルチコイド(ステロイド)の投与は高脂血症を誘発することが考えられるので、注意が必要です。

 

 

 

■ 高脂血症では無症状の場合が多いですが、嘔吐や下痢、食欲不振や腹痛などがみられる場合があります。

 

 

 

■ 治療については、

①食事療法(低脂肪食、高繊維食)

②サプリメント(アンチノール、ω-3 脂肪酸)

③脂質代謝改善薬(フィブラート系やHMG-CoA還元酵素阻害薬)

があります。

 

 

 

◆◆  このネコちゃんの場合、

血中TG 値およびT.Cho値はそれぞれ730 mg/dL、860 mg/dLでした。

一般的に重度の高 TG 血症(>500 mg/dL)では治療が必要であり、膵炎などの合併症を防ぐためにもトリグリセリドを減少させる必要があります。

 

 

 

■ また 800 mg/dL 以上で長期間持続する場合には粥状動脈硬化症に進展する可能性が考えられます。

 

 

 

◆◆ さて、今回はこれら高血中脂質濃度及びステロイド処方継続を考慮して、最初から脂質代謝改善薬による治療を行うこととしました。

 

 

 

■ また、脂質代謝改善薬の処方にあたっては、【 動物用脂質精密検査リポテスト 】という、血液中の脂質の種類を特定して治療薬の種類を決める検査を実施しました。

 

 

 

■ 専門検査機関から返ってきた検査結果から、脂質の代謝を改善してくれる薬剤を選び、低脂肪食の療法食を徹底し治療を開始すると、1カ月ほどでそれぞれの値はTG:172 mg/dL、T.Cho:225 mg/dLと下がっていました。

 

 

 

■ さて、 しばらくは本薬剤と療法食で脂質代謝の改善を維持しますが、ただ、今後は脂質代謝改善薬の副作用を考え、当院で最近、採用した新サプリメントの治療に切り替える予定です。

 

 

 

 

◆◆ このサプリメント成分は、魚介類に多く含まれ、副作用なく、血中の脂質低下作用、抗血栓および抗動脈硬化作用が期待できるためです。

 

 

■ 健康診断でこれらの数値が高かった動物さんは、ぜひ一度、当院で相談してみてください。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

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