【こんな症例も治りますシリーズ 639】 『 犬の臼歯が割れた 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の臼歯が割れた状態です。

■ 金属の器具で示している部分が、平板破折の部分です。

■ 良く見ると、歯のとがった先端部も割れています。

 

参照サイト:

https://00m.in/0AyT3

 

犬 ウェルシュコーギー 6歳3か月 オス(去勢手術済み)

 

 

【 奥歯が割れてしまっているのに気付いた 】という事で来院されました。

 

 

 

◆◆ 口の中を診察すると、左の上顎の第四前臼歯という1番大きな歯の尖っている部分が無くなっていて、さらに縦方向にも割れていました。

 

 

■ 犬の歯は、色々な方法で治療する事が出来ます。

 

 

■ 今回のような『 歯が欠けた、歯が割れた 』事を、『 破折(はせつ) 』と言います。 漢字は、歯が折れると書く、歯折ではありませんので、念のためにお伝えだけしておきます。

 

 

 

■ 破折に対しては、根管治療と言って歯髄(いわゆる神経)を除去して詰め物をする方法もありますが、今回は破折具合と今後のケアを考慮して抜歯をおすすめしました。

 

 

 

 

★ 臼歯は、歯の上部の歯冠部という部分と、歯の下部の歯根部、いわゆる歯茎に隠れている部分に分かれます。

 

 

 

★ 犬の臼歯に対する根管治療の場合、『 臼歯の歯根部に及ぶ、縦割れの破折 』には適しません。 エナメル質のある『 歯冠部 』だけの破折には、歯髄が露出している状態であれば、根管治療は成功します。

 

 

 

★ 歯肉の下の歯根部にある破折は、技術的には治療可能ですが、その後の術後ケアが大変です。 よって、当院では飼主様の歯科ケアに対する熱意と技術力によって、抜歯をしないで治療を行なう事もあります。

 

 

■ 上顎の臼歯が破折している時に注意しないといけないのは、『 歯を支えている歯槽骨の状態です 』。

 

 

 

★ 破折してから時間が経っていたり、歯石の付着状態や、日頃のデンタルケアの状態によって変わりますが、歯の根っ子の根尖部という部位を支える歯槽骨(アゴ骨)が溶けてしまう『 根尖部周囲の歯周病 』に注意です。

 

 

 

★ 実は、この上顎臼歯の根尖部の歯周病は、歯と眼の間に化膿を起こしてしまいます。

 

 

★ そして、時には『 皮膚を破って化膿物質が出てきてしまいます 』。

 

 

★ この歯周病の有無は、CT検査やレントゲン検査で事前に判明します。

 

 

 

 

■ 臼歯の抜歯後は、歯槽骨に穴が開いた状態になりますので、骨補填剤という特殊な医療用の粉を十分に詰めます。

 

 

 

■ また歯肉を歯科用の外科縫合糸で縫いますので、術創がある程度癒合して安定するまで柔らかい食事を与えてもらいました。

 

 

 

 

◆◆ 歯が欠ける原因は、硬いものを齧ることです。

 

 

 

 

■ 硬いおもちゃやケージなど噛んで遊ぶことは『 厳禁 』としていただきました。

 

 

 

■ 特に、臼歯破折の場合は、『 硬いオシャブリである \ヒヅメ/ 』を与えた事によるものが大きな原因になる事が多数を占めます。

 

 

 

 

◆◆ また、毎日歯のチェックをすることにより抜歯までしないで済んだかもしれません。

 

 

 

■ 食後の歯磨きは、歯周病予防になりますので是非続けていただきたいです。

 

 

 

 

獣医師 新井澄枝

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