【こんな症例も治りますシリーズ 613】 『 猫の水頭症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、猫の水頭症の『 脳のCT画像 』です。

■ 向かって左が、脳の右です。 向かって右側が、脳の左です。

■ 赤の*マークは左右の側脳室で、正常よりも著しく拡張しています。

■ この拡張所見は左側でより重度にみられ、赤矢印が示す部分の『 大脳縦裂は右側へと変位 』しています。

 

 

猫 トンキニーズ 1歳 メス(避妊手術済み)

 

【 後ろ足がよろめく 】という事で来院されたネコちゃんです。

 

 

◆◆ 飼い主様にお話を伺ってみると、『 半年前から、歩くとき左右の後ろ足がよろめき、高いところにうまく飛び乗れない 』また、『 寝ていることが多くなり、最近、性格が変わって攻撃的になった 』、との事でした。

 

 

 

■ 『 最初、近くの病院に行ったけど、血液検査とレントゲン検査では原因が良くわからない 』とのことで、ホームページを見て当院を受診されたとのことでした。

 

 

 

■■ 水頭症とは、脳内部にある脳室と呼ばれるスペースに脳脊髄液がたまり、脳が圧迫されることで障害が起きてしまう疾患です。

 

 

 

■ 猫の水頭症の原因には、主に先天性のものと後天性のものがあります。

 

 

■ 先天性水頭症は、遺伝が関与していると考えられ、多くの場合、生後3カ月から半年の間に症状が出現します。

 

 

■ 後天性水頭症は、猫伝染性腹膜炎(FIP)や脳腫瘍などの病気により発生します。

 

 

 

■ 水頭症は、犬に比べると猫の発症は少ないと言われています。

 

 

 

 

 

 

★★★ 症状としては、

① 元気がなくなる
② ぼーっとしていることが多い
③ 寝る時間が長い
④ ふらつく(うまく歩けない)
といった症状が一般的です。

 

 

また、神経症状も現れることがあり、

⑤ 痙攣などの発作が起きる
⑥ 性格が攻撃的になってしまう、
といった症状も見られます。

 

 

 

■ 検査・診断としては

① 神経学的検査
② 血液検査
③ X線検査
④ 超音波検査
⑤ CT検査/ MRI検査
⑥ 脳脊髄液(CSF)検査
などがあります。

 

 

 

■ また、この他に、猫伝染性腹膜炎(FIP)のウイルスのPCRや抗体価(感染の有無の指標となる)を調べることもあります。

 

 

 

■ 治療としては、

① 内科的治療では、ステロイド剤・利尿剤などで、脳圧の低下や脳の保護を図ります。
② また、けいれんが起こっている場合は、抗けいれん剤も使用します。

 

③ 一方、外科的治療では、脳室と腹腔などを医療用の管でつなぎ、過剰な脳脊髄液を腹腔内に排出するなどの手術があります。

 

 

 

 

 

◆◆◆ さて、このネコちゃんの場合、身体検査、血液検査及びレントゲン検査でも特に異常はみられませんでした。

 

 

 

■ しかし、問診と神経検査により、自宅での傾眠傾向、院内での興奮状態、左右後肢のよろめきから脳幹病変、前脳病変の可能性が考えられたためCT検査を行うこととしました。

 

 

■ そのCT検査の結果、『 顕著な左右側脳室の拡張 』が認められたことより、水頭症と診断しました。

 

 

 

■ ただ、今回のCT検査では、側脳室拡張の原因まで特定することはできず、先天的に脳脊髄液の流れが悪いのか、あるいは脳腫瘍などにより後天的に水頭症が生じているかがわからないため、飼い主様の希望もあり、後日、大学病院にてMRI検査を行うこととして、この日は、対症療法として脳圧を落ち着かせる目的で副腎皮質ホルモン薬と降圧利尿薬を処方しました。

 

 

 

■ MRI検査の結果、頭蓋骨内に明らかな腫瘍病変の存在は認められなかったとのことから、改めて先天性水頭症と診断しました。

 

 

 

■ また、治療法として、脳室腹腔シャント設置術等の外科的治療も考えられましたが、先日、処方したお薬で症状が落ち着いているとのことで、飼い主様の希望もあり、今後も、現在の内科的治療法を継続していくこととしました。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

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