【こんな症例も治りますシリーズ 588】 『 猫の副鼻腔炎( その2 ) 』(セカンドオピニオン診療)も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、この猫ちゃんの鼻のCT横断面画像です。

■ 二枚共に、向かって左側が『猫ちゃんの右側』で、右側が『同じく左側』です。

■ 左の写真は、鼻の中央部鼻腔の横断面で、赤い矢印の部分は『貯留物』です。

■ 右の写真は、眼球の近くの鼻腔に通じる『前頭洞』で、赤い矢印は『貯留物』です。

 

猫 ヒマラヤン 3歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 クシャミ・鼻汁が治らない 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 このネコちゃん、小さい時からクシャミ・鼻汁が出て、近隣の動物病院で治療を受けるも、治ったり、症状が出たりを繰り返してきた 』そうです。

 

 

 

 

 

■ 『 今年になってすぐに、またクシャミ・鼻汁が出たため、いつもの動物病院に行き、抗生剤とステロイドを処方してもらったけれど、今回はなかなか治らず、食欲も無くなり鼻汁に血も混じっていたことから、当院のブログ(本シリーズ421「猫の副鼻腔炎」)を見て来院 』されたとのことでした。

 

 

 

 

■■ 副鼻腔炎は、前回のブログにも書きましたが、鼻腔内の粘膜の炎症によりクシャミ・鼻汁の症状を起こし、炎症が副鼻腔や前頭洞まで波及した場合を言います。

 

 

 

■ 原因としては細菌(バイキン)・真菌(カビ・病原性酵母菌)・ウイルスの感染症やアレルギーの他に歯周炎から生じる場合もあります。

 

 

 

 

■ 最初の症状は鼻水や鼻づまり、くしゃみ、眼脂、さらに酷くなると呼吸困難、食欲不振、眼周囲の腫れなども伴う場合もあります。

 

 

 

 

■ 診断は、病歴、症状、鼻汁の培養検査、レントゲン、または麻酔下でのCT、MRI、鼻腔鏡などが必要な場合もあります。

 

 

 

 

■ 治療としては、感染症であれば、抗生剤、抗真菌剤、抗炎症剤などの内科治療を行います。

 

 

 

■■ このネコちゃんの場合、問診、身体検査及び鼻汁を採取し菌培養を行った結果、細菌感染による副鼻腔炎が疑われました。

 

 

 

■ ただ、鼻出血が見られていること、レントゲンで左鼻腔内に隆起が見られたこと、そして猫の主な猫の鼻腔疾患(上部気道感染症除く)では腫瘍や異物の発現頻度が高いことから、オーナー様の希望もありCT検査及びストロー生検による病理組織学的検査を行うこととしました。

 

 

 

■ その結果、左右鼻腔及び前頭洞内に少量の貯留物が散見されましたが、病変隣接骨に明らかな破壊は見られませんでした。

 

 

 

■ また。鼻腔内の貯留物の病理組織診断では、化膿性滲出物であることがわかりました。

 

 

 

 

■■ 以上のことから、心配された鼻腔内腫瘍の可能性は低く、初診の通り、「副鼻腔炎」と最終的に診断しました。

 

 

 

 

◆◆ さて、治療としては、採取された菌に対して、これまで使用していた抗菌剤では効かないことが分かりましたので、菌培養の結果から効く抗菌剤を処方するとともに、さらに当院で前から実施している吸入薬剤に、ドイツ式自然医学療法の抗炎症剤を加えるネブライザーを行いました。

 

 

 

■ 2週間後、飼い主様が「クシャミも鼻汁もすっかり良くなって、食欲も元通りになりました」とうれしそうにお話下さいました。

 

 

 

 

■ ただ、慢性化した副鼻腔炎は完治させることが難しく、再発を繰り返すことがあります。これからも、飼い主様と一緒になって頑張っていけたら思います。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

Page Top