【こんな症例も治りますシリーズ 565】 猫の『 高分化型消化器型リンパ腫 』も 適切な診断と治療で治します

 

↑ 上の写真は、正常の小腸と消化器型リンパ腫の小腸の超音波検査画像です。

■ 左の写真は、消化器型リンパ腫ですが、正常五層構造が失われています。

■ 右の写真は、正常の空腸(小腸)断面の超音波検査画像です。
五層構造がハッキリと見れます。

左から順番に、
空腸 jejunum
漿膜 serosa
筋層 muscularis
粘膜下組織 submucosa
(粘膜下層)
粘膜 mucosa
空腸内腔 lumen
です。

 

 

参照サイト:

https://bit.ly/3XFYnt6

https://bit.ly/3ZZrgBU

 

 

猫 アメリカンショートヘアー 15歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 下痢が治らない 】とのことで来院された猫ちゃんです。

 

 

◆◆ 近医での治療では治らなかったそうです。

 

 

■ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 元気・食欲はあるのですが、半年前から下痢が続いていて、近隣の動物病院にかかって、抗生剤や下痢止めを処方してもらったのですが、お薬を止めるとまた下痢になってしまう、の繰り返しで、なかなか治らない 』ので、ご自宅から少し遠いのですが、ホームページをみて当院に来院されたとのことでした。

 

 

■■ 猫の高分化型消化器型リンパ腫とは、猫のリンパ腫では最も発生の多いタイプで、リンパ腫細胞が、消化管に限局して増殖し、かつその増殖のスピードが遅い傾向(高分化)にある腫瘍です。

 

 

■■ 主な症状は下痢や嘔吐などの消化器症状が、慢性かつ緩徐に進行するといった特徴を示します。

 

 

■■ 診断は病理組織学的検査が最も信頼性の高い検査で、内視鏡や探査的開腹術でのバイオプシー(病変部の一部を採材すること)やFNA(皮膚から針を刺しての細胞診)で行います。

 

 

■■ 治療は経口の抗がん剤とステロイドの投与で、一般的に良好な治療反応を示すと言われています。

 

 

■ さて、この猫ちゃんの場合、血液検査、レントゲン検査の後、腹部エコー検査を行ったところ、腸管付近のリンパ節が腫大している事が確認されましたので、FNAにより腹腔内リンパ節の細胞を取って病理組織学的に調べることにしました。

 

 

 

■ その検査で、【高分化型消化器型リンパ腫】と確定診断されたことより、経口の抗がん剤としてアルキル化剤と副腎皮質ホルモンの内服で治療を開始しました。

 

 

 

■ また、血液検査の結果、ビタミンB12(シアノコバラミン)が低いこともわかりましたので、お薬で補充することにしました。

 

 

 

■ 現在、治療は始まったばかりですが、投与1週間目、少し下痢も落ち着てきたとのことです。

 

 

 

 

 

■■ 猫の高分化型消化器型リンパ腫は、適切な治療を行えば、高い確率で症状の改善が得られると言われています。

 

 

 

■ 今後は病状や副作用の有無に合わせ、お薬を調整していきますが、完全にお薬を止められることは稀とも言われています。

 

 

 

■ このネコちゃんの場合も、完治することは難しいかもしれませんが、今後は免疫力をアップさせるためのオゾン療法を取り入れる等、より生活の質(QOAL:クオリティオブアニマルライフ:動物の生活の質)を高め、少しでも長く飼い主様との楽しい時間を過ごしていただけたらと思います。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お早めにご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

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