【こんな症例も治りますシリーズ 563】 猫の『 閉塞性肥大型心筋症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、犬と猫の心臓病の特徴比較です。

■ 心臓病の犬の75%はMMVD(僧房弁粘液腫様変性)です。

■ 心筋症の猫は、肥大性心筋症が50%以上を占めます。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3ZSPfCK

 

猫 アメリカンショートヘアー 5歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 元気があるのに、心臓が悪いと言われたのですが・・・ 】とのことで来院された猫ちゃんです。

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 近隣の病院から、膀胱炎の治療のためにもらった抗生剤を飲んで、今日で2日目ですが、朝から何も食べなくなったんです。 抗生剤のせいでしょうか? あと、その病院で心房に逆流があるとも言われたのですが、ただ、元気もあり、今回の食欲がないのとはあまり関係ないのでは 』とのことでした。

 

 

■ その日は、聴診を含む身体検査、レントゲン検査、血液検査をしたところ、特に異常は認められず、尿検査で血尿がみられたので、適切な抗生剤を選択するために尿で菌培養検査、また、念のために血液で心臓バイオマーカー(NT-proBNP)検査を行うことにしました。

 

 

■ 数日後、心臓バイオマーカーのNT-proBNP値が582と正常値よりも高い値を示したことから、心臓エコー検査のため、再度、来院して貰いました。

 

 

■ ちなみに、血尿は続いているけど、食欲低下は抗生剤を止めた次の日から治ったとのことでした。

当院で調べた尿培養検査では、細菌を殺菌するほどのレベルではなく、問題がありませんでした。

 

 

■ 心臓エコーの結果、左心室壁の肥厚と軽度の僧帽弁閉鎖不全が見られたことから『 閉塞性肥大型心筋症 』と診断しました。 大動脈への血液の流れを阻む『 左心室流出路障害 』は、ありませんでした。 他院で『 心房に逆流があるとも言われた 』との事でしたが、逆流は軽度で良かったです。

 

 

■ そこで、肥大性心筋症の治療薬を処方を致しました。

 

 

 

★ 肥大型心筋症とは、心筋が厚くなってしまうことで心室が狭くなり、心臓がうまく膨らめず、十分な血液を送ることができなくなる病気です。

 

 

 

■ 猫の肥大型心筋症は有病率約15%で、発症年齢も3ヶ月から17歳と幅広く、オスで発症が多く認められています。

 

 

 

■ また、肥大型心筋症の約77%が無症状で、約18%では聴診による心雑音が聞こえないとの報告があります。

 

 

 

■ 原因としては、遺伝子の変異(メインクーン、ラグドール等)や家族性発症(アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド等)の報告もありますが、現在のところは未解明な部分が多いと言われています。

 

 

 

 

■ 肥大型心筋症の治療は、主に心臓のお薬の投薬による内科療法です。

 

 

■■ さて、このネコちゃんの場合、お薬を飲んで2週間後、お薬の副作用の有無も検査するため、心臓エコーを行ったところ、僧帽弁閉鎖不全による逆流が改善され、心拍数の減少もみられたことより、お薬が奉功していることが確認されました。

 

 

 

■ また、お薬によるふらつき等の副作用も見られないことから、このお薬による治療を継続することにしました。

 

 

 

■ ただ、肥大型心筋症の進行は、さまざまで、急に悪くなる子もいれば、進行がとてもゆっくりの子もいます。 また進行すれば、うっ血性心不全(肺水腫や胸水など)や血栓塞栓症を発症し、最悪突然死を招く場合も少なくありません。そのため、進行によってお薬を.調整する必要があり、今後も、心臓バイオマーカーや心臓エコー検査を定期的に行うことが重要となります。

 

 

 

■ これからも、一緒に、ネコちゃんの健康を見守っていけたらと思います。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

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