【こんな症例も治りますシリーズ 557】 『 猫の膵外分泌不全症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、各種ウンチの色具合です。

■ 左上の茶色は、普通のウンチ色。

■ 下段の真ん中は、胆汁分泌不全に良くありますが、『膵外分泌不全』でもこの色になります。

 

 

参照サイト:

https://bit.ly/3YM7mKj

 

猫 ミックス猫 5歳齢 メス(避妊手術済)

 

 

【 ウンチが酸っぱい臭いがするんですけど 】とのことで来院された猫ちゃんです。

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、『 2週間くらい前から、ウンチの量が多く、酸っぱい臭いがする。 また、元気で食欲もあるのですが、最近、瘦せてきた 』とのことでした。

 

 

 

■■■ ネコちゃんの膵外分泌不全症とは、膵臓から出る消化酵素が不足する病気です。

 

 

 

■ 食べたご飯をうまく分解できなくなり、十分な栄養素を吸収することができないため、食欲があるのに痩せてきて、毛ヅヤも悪くなるのが特徴です。

 

 

■ また、脂肪の消化・吸収がうまくできないため、ウンチが黄色や白っぽくなり、軟便・下痢がみられや異臭を発することもあります。

 

 

 

★ 膵臓の萎縮が原因となる場合もありますが、はっきりと分かっていません。

 

★ ネコちゃんでは、原因の多くが慢性膵炎とも考えられています。

 

 

★ また、ワンちゃんで比較的多く、ネコちゃんでの発生は少ないといわれています。

 

 

■ 検査としては、血液検査で膵臓に関わる酵素(トリプシン:TLI)の値やビタミン類(特にビタミンB12:シアノコバラミン)の測定。 また、糞便検査で未消化の脂肪を確認します。

 

 

■ 治療は、内科治療がメインになります。

 

 

 

 

◆◆◆ 膵外分泌不全では、膵臓から消化に必要な酵素が分泌されなくなってしまいます。

 

◆ そのため、不足している消化酵素を補うため、バランスのとれた食事に消化酵素剤やビタミンB12製剤を添加して与えます。

 

◆ 膵酵素剤は胃内の酸で失活しやすいので、効果が中途半端な場合には酵素剤の量を増やしたり、胃酸の分泌を抑える薬を併用します。

 

 

◆ ほとんどの場合、生涯にわたる治療が必要です。

 

 

 

■■■ さて、このネコちゃんの場合、血液検査の結果、TLIとシアノコバラミンの値が低値を示していました。

 

 

 

■ また、ウンチは表面が白っぽい色の軟便で、顕微鏡より脂肪滴が認められました。

 

 

 

■ 身体検査の結果とこれらの結果から、『 膵外分泌不全症 』と診断し、消化酵素剤とシアノコバラミンによる治療を行うことにしました。

 

 

■ 消化酵素剤は、食事ごとに胃酸を抑えるお薬と一緒に毎日飲んでいただき、シアノコバラミンを投与するため、一週間後に来院してもらったところ、体重が500gほど増加し、毛ヅヤが良くなり、ツヤツヤに戻っていました。

 

 

 

■ 『 まだ、ウンチは少し酸っぱい臭いがして、色も白っぽいのですが、1回の量が今までの半分以下になりました 』と、嬉しそうに飼い主様がお話下さいました。

 

 

 

■ まだ、治療は始まったばかりで、この先、状態に合わせ、消化酵素の量や種類を変えていく必要があるかもしませんが、これからも一緒に頑張っていければと思います。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お早めにご相談ください。

 

 

 

獣医師 泉 政明

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