【こんな症例も治りますシリーズ 525】 『イヌのモービッツⅡ型 Ⅱ度房室ブロック』 も 適切な診断と治療で治します

上の写真は、不整脈の比較表です。
■ 一番上の心電図は、正常です。
■ 二番目の心電図と正常像の差が分かりますか? 第Ⅰ度房室ブロックの心電図です。
■ 三番目の心電図は、明らかに異常が分かります。 第Ⅱ度房室ブロックの心電図です。
■ 一番下の心電図は、ペースメーカーの設置手術が必要です。 第Ⅲ度房室ブロックの心電図です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3SJ05I9

 

犬 ミックス犬 5歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 急に倒れてしまう 】ということで来院されたワンちゃんです。

 

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、これまでは1年に1回あるかないかだったのに、この2~3日で、立て続けに2回倒れてしまったとのこと。

 

■ 倒れている時間は1分間程度で、また立ち上ってケロッとしているのですが、心配になって近院のかかりつけ医に受診したところ、血液検査とレントゲン検査では原因がわからなかったとのことで、CT検査の出来る当院をホームページで知り、一度診てもらうことにした、とのことでした。

 

 

■ 倒れる原因(発作か失神か)が、中枢性(脳)か循環器(心臓)によるものか、大きく2つ考えられる中、血液検査とレントゲン検査しか実施していないことから、まずは、直ぐに当院で実施できる心エコ―と心電図を行ってみることにしました。

 

 

■ その結果、心臓収縮に必要な電気刺激が心房から心室にうまく伝わらず、全身に血液を送る心室のリズムが遅くなったり、停止したりする『 モービッツⅡ型 Ⅱ度房室ブロック 』が認められました。

 

 

 

■ 房室ブロックはその重症度によって、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分けられます。Ⅰ度・Ⅱ度房室ブロックは、電気刺激が伝わるのに時間がかかったり、時折うまく伝わらない状態です。

 

 

★ Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)は電気刺激が全く伝わらない状態で、失神や突然死につながることがあるため、ペースメーカーの植え込みによる治療が必要となります。

 

 

 

 

★ ただ、Ⅱ度房室ブロックでもめまい、失神、息切れ、疲労感を伴うことがあり、ペースメーカーが必要となる場合があるため、今回は、動物の循環器専門医に診療協力してもらい、現時点ではペースメーカーの必要ないⅡ度房室ブロック(モービッツⅡ型)と診断されました。

 

 

 

 

■ 房室ブロックが起こる原因としては、心筋梗塞、異型(いけい)狭心症、心筋炎などの心臓病、薬剤性(β(ベータ)遮断薬など)、高カリウム血症、過度の迷走神経亢進状態などが考えられます。

 

 

★ このワンちゃん、2週間ほど前から黄色い鼻汁が出て、ここ2~3日は鼻づまりで呼吸が荒くなっていたとのことで、それによって『 過度の迷走神経亢進状態 』に陥っていたため、房室ブロックがおこり、失神する回数が増えたものと考えられました。

 

★ 今回の診断には、『 迷走神経の亢進を抑制するお薬により、房室ブロックが抑えられたことを確認 』して、確定診断を行いました。

 

 

 

■ したがって、今回の房室ブロックに対しては、原因除去を考え、鼻づまりの治療として、鼻汁の菌培養、ネブライザー処置と抗生剤の処方を行うこととしました。

 

 

■ 治療は、まだ始まったばかりですが、ネブライザーと抗生剤が奉功しているようで、鼻づまりの調子は良く、倒れることもない症状の改善と、後日『 心電図検査が正常になった 』事を確認致しました。

 

 

■ これからも、動物さんの健康と幸せを飼い主様とともに見守っていけたらと思います。

 

 

獣医師 泉 政明

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