【こんな症例も治りますシリーズ 483】 犬の肺腺癌 も適切な診断と治療で治します

上のイラストは、ワンちゃんの肺の中に発生した腫瘍を示しています。
★『Tumor』と書いて指し示している部分(赤)が腫瘍です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3hr5h1E

 

 

犬  ミックス犬 11歳 オス (去勢手術済み)

 

 

【 最近咳が出る 】とのことで来院されました。

 

 

◆◆ まずは胸のレントゲンを撮影してみると、肺に影があります。

 

腫瘍を疑う所見です。

 

 

■ 犬の肺腫瘍は最も多いのが『 転移性腫瘍 』です。 腹腔内をレントゲン、超音波で検査しましたが、他の部位に腫瘍病変は認めませんでした。

 

 

■ 『 原発性肺腫瘍 』だと思われます。 犬の原発性肺がんは、アメリカの論文ですと『 診断されたすべての<がん>のわずか1% 』と発表されています。

 

 

■■ 『 犬の原発性肺腫瘍 』のほとんどは悪性であり、一般的なモノは『 肺腺癌 』です。

 

 

 

■ 今回の症状の原因は、『 肺腺癌 』かと推測されます。

 

 

 

■ 肺は、いくつかの肺葉に分かれています。
犬は、右側が前葉、中葉、後葉、副葉に分かれており、左側は前葉前部、前葉後部、後葉に分かれます。

 

 

◆◆ まずは、この腫瘍がどこの肺葉にあるか、本当に転移性肺腫瘍でないか、を調べるのが必要です。

 

 

 

■ この時に有用なのが『 CT検査 』です。 CT検査は、レントゲンではわからない、立体的な3D構造として検査することができます。

 

 

 

 

■ また、『 原発性肺腺癌 』は、肺内で『 転移や播種 』(拡がると言う意味)することがあります。 そちらもCT検査で判断が可能です。

 

 

 

■■ そこで、この子に対しても全身麻酔下でCT検査を行ってみると、今回の腫瘍は『 肺の副葉(右側の横隔膜に接している部分) 』にあることが分かりました。

 

 

■ また、肺内での転移はなさそうです。 気管-気管支リンパ節や縦隔洞リンパ節、胸骨リンパ節などの胸腔内リンパ節の腫脹(転移を示唆する所見)も認めませんでした。

 

 

 

■■ そこで、肋間開胸術と言って、肋骨の間から腫瘍を切除します。

 

 

■ 肺葉切除と言って、腫瘍がある肺葉を一塊にして切除するのが一般的です。

 

 

■ 視野も狭く、太い血管もあるため難しい手術でしたが、ワンちゃんは頑張ってくれました。

 

 

■ 胸腔外科の手術後治療管理に対しても、上手に乗り切ってくれて退院出来ました。

 

 

 

■■ 病理組織検査は、やはり『 肺腺癌 』でした。

 

★ 肺腺癌は、指先に転移する肺-指症候群や、腫瘍随伴症候群として肺性肥大性骨症を起こし、四肢に痛みが出てくることもあります。

 

 

■ 幸運にも症状は咳のみで、手術後、咳は出なくなりました。

 

 

■ 今後も再発に注意し、経過を診ていきたいと思います。

 

 

獣医師 増田正樹

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