【こんな症例も治りますシリーズ 446】 犬のブドウ膜炎の難治性転院症例 も適切な診断と治療で治します

上のイラストは、眼の断面図です。 
赤くなっている部分が、炎症部分です。
★ 犬の眼のブドウ膜炎は、色々な分類方法があるのですが、上の中央のイラストにある水晶体の周囲にある虹彩などが重要な部位です。
犬では、この部分の炎症を持っているブドウ膜炎が、一番多く発生すると思います。
ちなみに、右のイラストの赤い部分が炎症を持つと、後ブドウ膜炎という病名になります。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3Ar1BF2

 

犬 3歳、オス(去勢手術済)

 

【 一か月前から左目がおかしい 】とのことで来院されました。

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、このワンちゃん、1か月前から左眼を気にしだし、眩しそうに瞬きをしていました。

 

 

■ そのうち瞳のところが赤くなったことから、近隣の動物病院に行ったところ、眼検査の機器がないので、詳細は分からないが「ブドウ膜炎」と診断されたとのこと。

 

■ 近医でステロイド内服を処方されましたが、その後も症状が治らないことから、一度、別の病気で診察してもらったことのある当院に来院されました。

 

 

◆◆ ブドウ膜とは、目の一部である虹彩(こうさい)・毛様体(もうようたい)・脈絡膜(みゃくらくまく)の総称です。

 

※ ちょっと医学用語が沢山で分かりにくいですね。 簡単に言うと、黒目のところに瞳孔(暗いところだと開いて、明るいと閉まる膜状のモノ)があるとおもうのですが、この膜は、眼の中で目の後ろの方まで袋状に一枚の膜で繋がっているのです。
これが、ブドウの皮のような形をしているので、『ブドウ膜』というのです。

 

 

■ このブドウ膜に炎症が起こった状態を、ブドウ膜炎といいます。 ブドウ膜炎になると、瞳孔が小さくなる縮瞳(しゅくどう)がみられたり、他には、黒目の周りの白目の部分が赤く充血したり、涙が出たりすることもあります。 また、虹彩や瞳孔の前の部分で、モヤがかかったように白く見える、出血している、白い液体が溜まっている(蓄膿)などの症状が現れる場合もあります。

 

 

■ さて、このワンちゃん、当院で神経検査、STT検査(流涙検査)、細隙灯検査(スリットランプ検査)、フルオレセイン検査、眼圧検査、眼底検査と一連の眼検査を実施しました。 その結果、縮瞳、前眼房出血、毛様体充血、眼圧低下(6mmHg)が認められたことから「ブドウ膜炎」と診断されました。

 

 

■ ブドウ膜炎になる原因はさまざまなものがあります。 一番多いのは原因がよく分からない特発性や、免疫介在性のブドウ膜炎です。 その他、感染性(ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など)、高脂血症(ミニチュアシュナウザーに多い)、腫瘍性、また、目への強い衝撃や角膜穿孔(かくまくせんこう:角膜に穴が開く)、目の手術などにより、外傷性のブドウ膜炎も起こります。

 

 

■ 飼い主様に改めてお話しを伺ってみると、左眼を気にしだした1ヶ月前に、机にぶつかっていたことをお話して下さいました。 このことから、今回は外傷によるブドウ膜炎である可能性が高いことから、抗炎症剤としてステロイド点眼薬と細菌による二次感染を防ぐため抗菌点眼薬を処方しました。

 

 

■ 治療を始めて2週間後、再度、来院いただき経過をお聞きしたところ、前眼房の出血はなくなり、また、毛様体充血も消えていました。 まだ、眼圧は少し低いため、治療は続きますが、すっかり元気になったワンちゃんをみて、飼い主様もうれしいそうに笑っていました。

 

 

■ これからも、飼い主様と一緒になって『動物さんの健やかな幸せ』をプロデュースできたらと思います。

 

 

獣医師 泉 政明

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