【こんな症例も治りますシリーズ 399】 治りにくかったワンちゃんの 胃拡張・胃捻転症候群(GDV) も適切な診断と治療で治っています

犬の胃拡張・胃捻転症候群のレントゲン画像です。
黒っぽい袋状のところが胃ですが、逆C型に見れます。 まれに、胃が逆回転する場合があるので、要注意で総合的な診断が必要です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3jui3gg

 

5才 ラブラドール 避妊済み

 

【 お腹が膨らみ、吐きたくても吐けない 】という症状で来院されました。

 

 

■ ゴールデンレトリバーや、ラブラドール、ドーベルマン等、胸の深い大型犬では、特に、食後の急な運動後など行うと、お腹が急に膨らんでしまう事があります。 この症状は、胃が捻れてしまい、胃拡張・胃捻転症候群(GDV)になってしまっている可能性が高いです。

 

■ その後には、吐きたくても吐けない様子が続いたり、グッタリしてしまいます。

 

■ この状態は、ショック状態、なかでも閉塞性ショックといい、大変危険な状態です。

 

 

◆◆◆ この子も来院時、自分で歩けず、口の粘膜も真っ白、ショック状態でした。

 

■ これは直ぐに処置を行わなくてはならない、救急疾患です。

 

 

★★ 救命救急を行いながらも、血液障害、心臓障害などをケアしなければなりません。

 

 

■ まずは血管に柔らかい針を固定して、静脈確保、点滴治療をはじめ、全身麻酔をかけ、口からホースを入れて胃の内容物を抜去します。

 

■ この子はなんと胃からガスが2リットル以上、胃液が700ミリリットルもぬけました。

 

■ 胃が縮んでも終わりではありません。 胃を元に戻し、もう再度ひっくり返らないように、胃と腹壁を固定する、胃固定手術が必要です。 この手術方法には、複数のコツがあります。 当院では、独自の方法をあみ出して成功させています。

 

 

★★ 胃がひっくりかえってしまうと、隣あっている脾臓も一緒に捻転して、胃に血が巡らない虚血状態が続くと胃が壊死し、切除手術も必要になる場合があります。 手術には慎重な判断と素早い対応が必要です。

 

 

■ この子は、緊急救命救急手術を行い、なんとか麻酔から冷めてくれました…  手術中にメスを入れて縫合した胃の色は悪くなく、脾臓も摘出しましたが、周囲は大丈夫そうな事を確認してから閉腹しました。

 

 

 

◆◆◆ しかし、これで終わりではないのです。

 

■ 胃が元の位置に戻ると、臓器や血液中に留まっていた毒素が流れ出し、体に悪い影響を与えます。 【 再還流障害 】と言います。 再還流障害が起こると、不整脈が起こったり、微小血栓が全身に出来る播種性血管内凝固症候群(DIC)に陥る事が多々あります。 この2つの病気は、手術前から起こっている事が多いです。

 

■ 血液障害、心臓障害などは、慎重な術後管理が必要な【 重大で致死的な病気 】に発展します。

 

■ この子は、手術後に、心室期外収縮という不整脈が頻発してしまいました。

 

 

◆◆◆ しかし、通常の点滴と抗不整脈薬などの持続微量点滴を併用して、三日間の集中治療したところ、不整脈はなくなり、元気に立ち上がってくれました!

 

■ この病気は、亡くなってしまう病気です。 治療しても改善せず、容態がすぐに急変してしまう事も少なくありません。 普段から、食事を小分けにする、食後は興奮や運動をしないで安静にする等、日々、この病気が起こらない様にしていく事も大切です。

 

■ 『 お腹が急に膨れてきた、吐きたくても吐けない 』、そのような様子がありましたら、病院に電話をしてから、すぐに御来院下さい。

 

 

※ ちなみに、チワワなどの小型犬でも胃拡張・胃捻転症候群発症する事が報告されています。 小型犬の飼主様も、ご注意下さい。

 

 

獣医師 増田正樹

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