【こんな症例も治りますシリーズ 827】『 体重減少の原因は胃の炎症だった猫の症例  ― CT検査で見えてきた十二指腸病変 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、猫ちゃんの十二指腸入口の内視鏡と、十二指腸のCT画像です。

■ 左は内視鏡像で、胃粘膜が腫脹しています。

■ 右はCT画像で、赤矢印の部分は『膜の連続性が消失』しています。

 

 

猫 ミックス犬 13歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 健康診断で来院された際に、以前より体重が減少している 】ことが確認されました。

 

 

◆◆ 飼い主様からは大きな体調の変化は聞かれませんでしたが、高齢猫では体重減少が重要なサインとなることがあるため、詳しい検査を行うことにしました。

 

 

■ 血液検査では、軽度の貧血とアルブミン(タンパク質)の低下が認められました。

 

■ アルブミンは栄養状態や消化管疾患、慢性炎症などで低下することがあり、この結果からも何らかの慢性的な消化器疾患の可能性が考えられました。

 

■ そこで腹部エコー検査を行ったところ、胃壁の肥厚が確認されました。

 

### 胃壁の肥厚は、胃炎や腫瘍などさまざまな疾患で見られる所見であり、原因を特定するためにはさらに詳しい検査が必要になります。

 

 

 

◆◆ この時点で改めて問診を詳しく行ったところ、
『 最近吐き戻しが少し増えてきていた 』というお話がありました。

 

 

■ 吐き戻しは猫では比較的よく見られる症状ですが、高齢猫で頻度が増えている場合には注意が必要です。

 

 

■ そこで、より詳しく評価するためにCT検査と内視鏡検査を実施しました。

 

 

 

### 内視鏡検査では、胃の幽門部(胃の出口部分)に腫瘤様の病変が確認されました。

 

 

■ 幽門部は胃の出口にあたる部分で、炎症や腫瘍が発生することがある部位です。
その場で**生検(組織採取)**を行い、病理組織検査へ提出しました。

 

 

 

### 一方、CT検査では胃だけでなく、十二指腸にも炎症を疑う所見が認められました。

 

 

■ 具体的には、粘膜の連続性が不明瞭となる部分があり、十二指腸炎の可能性が示唆されました。

 

 

■■ 後日届いた生検病理組織検査では、『 幽門部の病変は過形成 』という結果でした。

 

 

■ 過形成とは腫瘍ではなく、慢性的な炎症などによって粘膜が厚くなる良性変化です。

 

 

■■ この結果から、今回の病変は『 慢性胃炎に伴う粘膜変化 』である可能性が高いと考えられました。

 

 

 

 

◆◆ 治療として

 

 

プロトンポンプ阻害剤(制酸剤)

胃粘膜保護剤

を処方しました。

 

 

■ 治療開始後、吐き戻しは消失し、食欲も安定してきました。

徐々に体重も回復してきており、現在のところ経過は良好です。

 

 

 

 

◆◆ 今回の症例では、内視鏡検査で胃の病変は確認できましたが、十二指腸の炎症所見はCT検査で初めて疑うことができました。

 

 

■ 消化管疾患の評価では内視鏡が重要な検査ですが、病変の広がりや腸管全体の評価にはCT検査が非常に有用であることを改めて実感する症例でした。

 

 

◆◆ 現時点では腫瘍の可能性は低いと考えられますが、完全に否定できるわけではありません。

 

 

■ もし今後、吐き戻しの再発や症状の悪化が見られる場合には、幽門部腫瘤の深部検査や十二指腸の生検など、さらに踏み込んだ検査を検討する必要があります。

 

 

 

 

■■■ 猫では、体重減少や吐き戻しといった一見軽い症状の背景に、消化管疾患や腫瘍が隠れていることがあります。

 

 

■ 特に高齢猫では、症状が軽くても早めに検査を行うことが重要です。

 

 

■ 今回のように、適切な検査と治療によって症状が改善するケースも多くあります。
気になる変化があれば、早めにご相談ください。

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

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