【こんな症例も治りますシリーズ 797】 『 若い犬の頬にシコリ 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の頬に『しこり』があります。

 

参照サイト:

https://00m.in/IFUJQ

 

犬 ジャックラッセルテリア 1歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 2週間くらい前から、ほっぺにシコリがあることに気づいた 】とのことで来院されました。

 

 

 

◆◆ 『 頬に出来たしこり……その正体は?』

 

 

 

◆◆ 来院時の状態

 

 

・ 右の頬部分に小さなシコリが触知されました。

・ 痛みは強くなさそうでしたが、本人が少し気にして前足でかいたりこすったりする様子が見られました。

・ 飼い主様は『 特にケガした覚えもないし、ぶつけた記憶もない 』とのことでした。

 

 

■ そこで、まずは シコリに細い針を刺して細胞を採取し、病理検査専門会社へ提出 しました。

 

 

 

 

◆◆  細胞針検査の結果

 

 

■ 結果は 『 マクロファージ性炎症 』 と評価されました。

 

■ この所見から考えられる原因としては、

・ 無菌性肉芽腫

・ 感染に伴う炎症

・ 異物反応

・ 腫瘍に付随した二次的な炎症

 

 

など、いくつかの可能性がありました。

 

 

 

■ しかし、細胞診検査だけでは『 何が原因で炎症が起きているのか 』までは確定できません。

 

 

■ さらに、この子は シコリを気にして掻いてしまう ため、このまま様子をみると悪化したり、感染を起こす可能性もありました。

 

 

■ そのため今回は、
シコリをまるごと取って調べる『 組織病理検査のための切除生検 』 を行うことにしました。

 

 

 

◆◆ 手術と最終的な診断

 

 

■ 手術は無事終了しました。

 

 

■ 切除した組織を病理組織検査に提出したところ、
『 異物性の炎症が強く疑われる 』 という結果でした。

 

 

■ つまり、

・ 腫瘍ではなく

・ 細菌感染でもなく

・ 身体が“何か”に対して炎症反応を起こした状態

 

だったということです。

 

 

 

■ 異物として考えられるものは、

毛、植物片、砂、小さなトゲ、あるいは小さな傷から入り込んだ微粒子など、

日常生活の中で自然に起こりうるもの です。

 

 

 

◆◆ 術後の様子

 

 

■ 術後はとても順調で、

頬の腫れも引き、傷もきれいに治ってきています。

 

 

■ そして 腫瘍や深い感染が『 なかった 』 ため、

・ 不必要な抗菌薬の長期投与

・ ステロイドの継続使用

 

 

を しないで済んだ のは、とても大きなポイントです。

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

 

■ 今回のように、
『 シコリ = 腫瘍 』とは限りません。

 

 

■ しかし、

見た目だけで判断して経過観察を続けてしまうと、診断が遅れたり、逆に不必要な薬が使われることもあります。

 

 

 

■ 今回の子は、

・ 飼い主様が早めに来院してくださったこと

・ 細胞針検査だけでなく、切除生検で確定診断に踏み切ったこと

この2つがとても良い結果につながりました。

 

 

 

■ 今回は 「 腫瘍ではないシコリ 」 の症例でしたが、

皮膚のシコリは見た目や触った感じだけでは判断が難しいことが多いです。

 

 

 

大切なのは「早めに調べること」。

気になるシコリが見つかったら、

ぜひ放置せずに一度ご相談くださいね。

 

 

 

 

獣医師 土屋優希哉

 

 

 

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