【こんな症例も治りますシリーズ 762】『 目の周りが腫れてきた! 左眼窩腫瘍 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の顔のCT検査画像です。

◆ 目に出来た腫瘍の横断面ですが、左側の飛び出している部分が『左眼窩腫瘍』です。

 

 

犬、トイプードル、15歳、メス(避妊手術済み)

 

 

【 飼い主様から『 最近、左目のまわりが腫れてきた 』 】とのことで受診されました。

 

 

 

◆◆ 診察時には以下のような異常が確認されました。

 

 

1)左眼周囲の腫脹(特に上眼瞼)

 

 

2)軽度の眼球突出

 

 

 

 

■ 異常が表面だけでなく、眼の奥にある可能性が高かったため、レントゲン検査、眼科エコー検査を行いました。

 

 

 

 

■■ その結果、腫れている部分に液体貯留と、その下にある腫瘤が確認できました。

 

 

 

 

 

 

◆◆ 眼窩腫瘍は、眼球の奥にある『眼窩(がんか)』と呼ばれる部位にできる腫瘍です。

 

 

 

 

■ 次のような特徴があります:

1) 多くは悪性腫瘍(例:軟部組織肉腫、リンパ腫)

 

 

2) 初期症状には、目の突出、まぶたの腫れ、涙の増加、痛みなど

 

 

3) 高齢犬での発症が多く、進行がゆるやかな場合もある

 

 

4) 診断にはCTやMRIなどの高度画像検査が重要です

 

 

 

 

◆◆ 腫瘤の大きさや浸潤、全身の他の臓器への転移の有無の確認のためCT検査と細胞診検査を行いました。

 

 

◆ CT検査の結果、左眼球の後方に腫瘤性病変を確認しました。

 

 

 

 

■ 眼球を前方に押し出すように圧迫していますが、眼神経や眼球への転移、他の臓器への転移は確認できませんでした。

 

 

 

 

 

◆ 細胞診の結果からは良性、悪性の判別がつきませんでした。

 

 

■ 飼い主様とご相談し、腫瘤の外科的切除を行うこととなりました。

 

 

■ 腫瘤が悪性だった場合に、摘出後に放射線治療を行う計画を立てていたため、眼球への影響を考えて、左眼球も一緒に摘出することになりました。

 

 

 

 

◆◆ 腫瘤の摘出手術は無事終了し、病理組織検査の結果は『 良性の腫瘍である涙腺腺腫 』でした。

 

 

■ 涙腺腺腫(るいせんせんしゅ)とは、涙をつくる組織(涙腺)に発生する良性の腫瘍の一種です。

 

 

■ まぶたや眼の周囲に腫れやシコリとして現れることがあり、高齢の犬でみられることが多いです。

 

 

 

 

◆◆ 涙腺には主に次の2つがあります:

 

 

 

1) 主涙腺(じるいせん):上まぶたの奥にあり、涙の大部分を分泌

 

 

2) 瞬膜腺(しゅんまくせん):第三眼瞼(瞬膜)に存在し、補助的に涙を分泌

 

 

 

 

■ このうち、腫瘍がよく出来るのは瞬膜腺やその周辺の組織です。

 

 

 

 

 

◆◆ 今回のワンちゃんは術後の経過も良く、将来への不安も解消され飼い主様も喜んでいただきました。

 

 

■ 今回は飼い主様がはじめに『 いつもより白目が見えている気がする 』と異常に早期に気づいていただきました。

 

 

■ いつもと違う気がする、という違和感はとても大切ですので、ご不安なことがありましたらお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

獣医師 木島里衣

 

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