【こんな症例も治りますシリーズ 540】 猫ちゃんの『 胃捻転症候群 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、左が『胃ガスの減圧前』、右が『減圧後』です。
1)高齢猫
2)早期発見
3)早期的確診断 ⇒ 短時間で内科治療
⇒⇒ この条件であったので、的確な内科治療のみで命が助かった症例です。

 

猫 ミックス猫 14歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 本日急に腹部が腫れてきた 】ということで来院されました。

 

 

◆◆ 触診してみると、上腹部が何かの臓器でパンパンになっています。

 

 

■ また、股動脈圧も触れず、低血圧が疑われ、『 ショック状態 』です。

 

※ ここで言う『ショック状態』とは、『 全身の末端である末梢血管にまで血液が流れなくなって、組織・臓器の血流の不全状態が起こり、一般には血圧が低下して、重要な臓器の障害が起こる。 その結果、命が危険な状態になる。 』事を指します。

 

 

 

■■ 腹部レントゲンを撮影してみると、胃がガスでパンパンに膨れています。

 

 

■ また、ポパイアームや、ピラーサイン(逆C型サイン)と言われる、胃が捻転している時に出てくるレントゲン陰影も見受けられます。

 

 

 

■ 『 胃拡張胃捻転症候群(GDV) 』です。

 

 

 

 

 

■■ 通常、胃拡張胃捻転症候群は、大型犬や胸の深い犬種に多く、食後すぐ運動してしまったり、何かの病気で、胃の通過障害があったりした場合に、胃がひっくり返り、胃ガスが溜まる状態を言います。

 

 

■ 猫では極めて稀な状態です。

 

 

 

■ 胃拡張胃捻転症候群は、腹部で胃が膨隆することで、血流も阻害され、閉塞性ショックといわれる灌流障害に陥ってしまいます。

 

 

■ すぐに胃の減圧の処置が必要です。

 

 

 

■ 胃を針で刺し、ガスを抜く手技もありますが、胃穿孔のリスクもあるため、口や鼻からチューブ挿入を試みました。

 

■ 運良く、鼻から入れたチューブが胃まで届き、胃ガスを抜くことが出来ました。

 

★ 胃ガス、胃液あわせて300mlほど抜去する事ができました。

 

 

 

■ この子は腹部超音波検査を行なってみると、肝臓に腫瘍性の変化が見つかりました。
おそらくはそういった腫瘍が、消化器官の運動の低下を起こしたのだと推測されました。

 

 

 

■ 本来であれば、胃の捻転が疑われる状況ですので、麻酔をかけて手術と言う治療方針になります。

 

 

★ 具体的には、開腹し、胃の正常位置への整復、再度捻転を防止するための胃の固定手術、そして肝臓腫瘍の切除が必要です。 なぜならば、臓器の再灌流障害による体内の毒素上昇と、胃の部分壊死や、脾臓壊死が大きな問題になるからです。

 

 

 

◆◆ しかし、高齢であること、腫瘍を持っている子である事、この子の今後を考え、飼い主様は自宅での安静を強く希望されました。

 

 

■ それでも2日後、ゆっくり少量ずつ食事を食べてくれる姿を見せに来院してくれました!

 

 

 

 

★ 胃が捻転してから内科治療終了までの時間が極めて短かったのでしょう。 回復したのは、奇跡に近い事です。

 

 

■ 今後は、なるべく苦痛を和らげ、再度拡張しないように注意深く診ていきたいと思います。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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