【こんな症例も治りますシリーズ 434】 猫の原因不明の肝疾患 も適切な診断と治療で治します

猫ちゃんの肝臓です。
猫ちゃんの肝臓機能は、ワンちゃんとは異なり、とても弱い動物です。
やさしく癒してあげて下さい。

 

参照サイト:

https://bit.ly/364aIxQ

 

日本猫 9歳 オス(去勢手術済)

【 肝酵素の上昇が治らない 】とのことで来院された猫ちゃんです。

 

 

◆◆ 飼い主様からお話を伺ってみると、この春くらいから食欲がなくなり体重が減ってきたことから近くの動物病院で診察してもらったところ、肝酵素が上昇していたことから「胆管肝炎(リンパ球性)」の可能性が高いと言われ、ステロイド剤と肝臓用のサプリメントを処方されたとのこと。

 

 

■ その後、食欲も戻り体重も増えてきたのですが、肝酵素、特にALT(GPT)の値が下がらず、逆に1000近くまで上昇したことから、ホームページをみて当院で一度診てもらうことにしたとのことでした。

 

 

■ ネコちゃんで肝酵素が上昇する原因としては、

 

 

① 肝臓の疾患(慢性および急性の肝炎、胆管肝炎、猫の肝リピドーシスなど)、

② 薬物(プレドニゾロン、フェノバルビタールの投与など)、

③ 腫瘍、

④ 甲状腺機能亢進症、

⑤ うっ血性心不全、

⑥ 筋疾患、

⑦ 膵炎など様々です。

 

 

 

 

■ 重要なことは、肝酵素上昇 = 肝臓病とは限らず、肝酵素値だけが問題ではないということです。 数値が高い場合は他の疾患も視野に入れながら各々鑑別し、超音波検査や肝生検などによって確定診断を行うことが大切です。

 

 

 

 

■ さて、当院でも血液検査、レントゲン検査や超音波検査を実施し(肝臓に炎症が見つかったものの、確定診断のための細胞診や生検は、飼い主様がご希望されませでした)、また、飼い主様から見せていただいた、かかりつけ医院での検査結果を参考に、「慢性肝疾患」と仮診断しました。

 

 

■ 「胆管肝炎(リンパ球性)」治療としては、通常プレドニゾロンを中心とした抗炎症剤・免疫抑制療法が行われますが、このネコちゃんの様に、肝疾患の原因がはっきりせず、肝酵素値だけが高くて特に症状もないといった場合には、強肝剤や抗菌剤などの投薬を行って効果を判定するのが一般的です。

 

 

■ 今回は、細菌による炎症を示す好中球の数値は正常範囲であること、またプレドニゾロンを飲んでいることなどから、治療方針としては、当院で「慢性疾患」に以前から行っている「再生医療」を治療に用いるとともに(飼い主様のご希望でもありました)、プレドニゾロンの減量→中止を行うことにしました。

 

 

 

 

■ 3週間の治療後、血液検査を行ったところ、これまでなかなか下がらなかったALTが半減していました。 またプレドニゾロンの減量→中止により、その薬による副作用の心配もなくなりました。

 

■ まだ正常値ではありませんが、飼い主様によると前より元気・食欲がでてきたと嬉しそうにお話ししてくれました。 まだこの治療は続きますが、ますます猫ちゃんが元気になるよう、飼い主様と一緒に頑張っていければ思います。

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

 

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