【こんな症例も治りますシリーズ 881】『 ワンちゃんの健康診断で見つかった脾臓のしこり(脾臓腫瘤) 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、今回のワンちゃんの健康診断で見つかった脾臓の腫瘤(しこり)の、三相造影CT検査の画像です。
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◆ 脾臓の腫瘤は、症状がないまま大きくなることが多く、健康診断で見つかることも少なくありません。
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◆ 造影剤による染まり方のパターンから、結節性過形成(良性のしこり)を疑う所見が得られました。

 

 

犬 ヨークシャー・テリア 8歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 健康診断 】で、脾臓に腫瘤(しこり)が見つかったワンちゃんです。

 

 

■ 今回は、症状がない中、健康診断でたまたま脾臓(お腹の中にある、血液をためたり古い血液を壊したりする臓器)に腫瘤が見つかった症例をご紹介します。

 

 

 

 

◆◆ 健康診断でたまたま見つかった脾臓の腫瘤(しこり)

 

 

■ ワンちゃんの脾臓の腫瘤には、良いもの(良性)から悪いもの(悪性)まで、さまざまな種類があります。

 

 

・ 結節性過形成(脾臓の細胞が増えてできる、良性のしこり)

・ 血腫(血液のかたまり)

・ 血管肉腫(血管の細胞からできる、悪性の腫瘍=がん) など

 

 

 

 

■■ 特に注意が必要なのは、画像で良性が疑われても、悪性の腫瘍を完全には否定できないことです。

 

 

■ そのため、腫瘤の性質だけでなく、次のようなことも含めて、総合的に評価する必要があります。

 

 

・ 全身の状態

・ お腹の中で出血していないか

・ ほかの臓器への転移を疑う所見がないか

 

 

 

 

◆◆ 今回はFNA(針で細胞を取る検査)よりも画像検査を優先

 

 

■ 脾臓の腫瘤の診断では、細い針を刺して細胞を取るFNA(細胞診)を行うことがあります。

 

 

■ しかし、FNAには注意すべき点もあります。

 

 

・ 血管肉腫のような血管の腫瘍では、取れるものがほとんど血液になってしまい、診断に十分な情報が得られないことがある

 

 

・ 針を刺したところから出血することがある

 

 

・ 腫瘍の細胞が、針を刺した道筋に沿ってまわりに散らばる(播種)おそれがある

 

 

 

 

■■ 今回のワンちゃんは、以前から慢性肝炎(肝臓の炎症が長く続く病気)があり、血液凝固検査(血が止まりやすいかを調べる検査)にも異常がありました。

 

 

■ そこで、針を刺すことによる出血のリスクと、そこから得られる情報を慎重に比べた結果、今回はFNAを先に行わず、画像検査による評価を優先することにしました。

 

 

 

 

◆◆ 三相造影CT検査で、腫瘤の性質を詳しく評価

 

 

■ 全身の状態を確認したうえで、麻酔をかけて三相造影CT検査を行いました。

 

 

■ CT検査は、ただ腫瘤の大きさを確認するだけの検査ではありません。

 

 

■ 三相造影CT検査とは、造影剤(血管や臓器を画像で見やすくする薬)を注射した後、3つの異なるタイミングで撮影する検査です。

 

 

・ 腫瘤の中への血液の流れ方

・ 造影剤による腫瘤の染まり方

・ 腫瘤の中の構造

 

 

 

■ これらを詳しく調べることができます。さらに、脾臓以外の臓器も確認することで、転移を疑う病変があるかどうかや、病気の広がりについても評価できます。

 

 

 

■■ 脾臓の腫瘤では、この染まり方のパターン(造影パターン)が、良性か悪性かを見分けるための大切な手がかりになります。

 

 

■ 実際に、結節性過形成(良性)と血管肉腫(悪性)では、染まり方に違いがみられることがあり、三相造影CT検査で得られる情報は、手術前の見分けや治療方針を考えるうえで役立ちます。

 

 

■ もちろん、両者の画像には似ているところもあるため、CT検査だけで確定診断(最終的な診断)ができるわけではありません。

 

 

■ それでも、細胞診を行うことが難しいワンちゃんにとっては、腫瘤の性質を評価し、病気の候補を絞り込むための、とても役に立つ検査のひとつです。

 

 

 

 

◆◆ 検査の結果

 

 

・ 肝臓や肺に、明らかな転移を疑う所見はありませんでした。

・ 脾臓の腫瘤の染まり方からは、結節性過形成(良性のしこり)を疑う所見がみられました。

 

 

 

■■ これらの結果は、今後の方針を考えるうえで、とても大切な情報となりました。

 

 

■ ただし、結節性過形成が疑われる画像であっても、血管肉腫などの悪性腫瘍を完全に否定することはできません。

 

 

■ 確定診断には、手術で取り出した組織などを顕微鏡で調べる、病理組織検査が必要になります。

 

 

 

 

◆◆ ご家族と相談し、定期的な経過観察へ

 

 

■■ 検査結果をもとに、今後の方針についてご家族と相談し、飼い主様のご希望もふまえて、今回は定期的な経過観察を行うことになりました。

 

 

■ 経過観察では、超音波検査(エコー検査)などで、腫瘤の大きさや中の構造の変化を確認し、必要に応じて血液検査や追加の画像検査も考えます。

 

 

■ また、腫瘤の変化だけでなく、次のような症状にも注意が必要です。

 

 

・ 元気や食欲が落ちる

・ 歯ぐきの色が白っぽくなる(貧血のサイン)

・ 急にふらつく

 

 

 

■■ このような変化がみられた場合には、次の予定を待たずに、すぐに再検査をする必要があります。

 

 

 

 

 

◆◆ 今回の症例から

 

 

■ 今回のワンちゃんでは、慢性肝炎と凝固検査の異常があったため、どの検査を選ぶかについても、その子ごとのリスクを考えました。

 

 

■■ 脾臓の腫瘤の診断では、すべてのワンちゃんに同じ検査を行うのではなく、検査から得られる情報と、検査にともなうリスクを比べながら、その子に合った方針を選ぶことが大切です。

 

 

■ CT検査は、病気の広がりを確認するだけでなく、造影パターンから良性か悪性かを見分けるうえでも役立ちます。

 

 

■ 今回も、CT検査によって結節性過形成を疑う所見が得られ、今後の方針を考えるための大切な情報となりました。

 

 

■ 今後も定期的な検査で変化を注意深く確認し、その時点で最善と考えられる対応を考えていきます。

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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