【こんな症例も治りますシリーズ 812】『 失神で来院したトイプードルさん〜心膜液があっても「抜かない」判断をした症例〜 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、左が治療前、右が治療後です。

■ 黄色い矢印の先端の『黒い部分』は、心嚢水です。

■ 治療によって『黒い部分』が減少して治っています。

 

 

犬 トイプードル 10歳 オス(去勢手術済)

 

 

◆◆ 【 失神 】を主訴に来院されました。

 

 

■■ 来院時の状態

 

 

来院時の身体検査で、

 

・ 重度の心雑音

・ 呼吸状態の悪化

が確認されました。

 

 

 

■ すぐに 酸素をかがせながら胸部レントゲン検査 を実施したところ、丸く大きくなった心臓 が確認されました。

 

 

■ さらに、できるだけ負担をかけないよう、
短時間での簡易的な心臓超音波エコー検査 を行いました。

 

 

 

 

■■ 心臓超音波検査で分かったこと

 

超音波検査の結果、

・ 重度の左房拡大

・ 心膜液貯留

が確認されました。

 

 

 

■■ 心膜液貯留がある場合の考え方

 

一般的に、心膜液貯留 が認められた場合には、

・ 心膜穿刺によって貯留している液体を抜く

・ 抜いた液体を検査して原因を調べる

という対応をとることがあります。

 

 

 

■■ しかし、この子には 基礎疾患として僧帽弁閉鎖不全症 があり、心臓超音波エコー検査の所見からも『 左房破裂に伴う心膜液貯留 』が強く疑われました。

 

■ そのため、今回は 心膜穿刺は行いませんでした。

 

 

 

 

◆◆ 左房破裂が疑われる場合の注意点

 

 

■ 左房破裂が原因の場合、心膜内に貯留した血液による「圧」が破れた部位の止血効果として働くと考えられています。

 

 

■ そのため、心膜液を抜いてしまうと、再度出血を起こしてしまう可能性があり、急性期では穿刺を行わない方が良いとされる場合があります。

 

 

 

***

 

 

◆◆ 今回の症例では、

心膜液は確認されたものの、心タンポナーデを起こしている所見は認められませんでした。

そのため、緊急で心膜穿刺を行う必要はないと判断しました。

 

 

 

◆◆ 心タンポナーデとは?

 

■ 心タンポナーデ とは、心膜液が急激または大量に溜まることで、心臓が外から圧迫され、うまく広がれなくなる状態を指します。

 

 

■ 心タンポナーデを起こすと、

・ 血圧の低下

・ 腹水貯留

・ 頸静脈の怒張

・ ぐったりする

 

 

といった 命に関わる症状 が出ることがあります。

 

 

 

 

◆◆ 治療とその後の経過

 

この子には、

・ 強心薬

・ 利尿薬

を処方し、

しっかりと安静にすること を指示しました。

 

 

 

 

■ その結果、次回の来院時には、

・ 心膜液は消失

・ 失神症状も消失

・ 呼吸状態も改善

しており、安定した状態を保てていました。

 

 

 

 

◆◆ まとめ

 

■ 今回の症例では、

もともと心疾患があることが分かっていた ため、

・ 心膜液があるからすぐ穿刺する

という判断を避けることができました。

 

 

■ 心臓の病気では、

「処置をすること」よりも「しない判断」が正解になる場合もある

という良い例だと思います。

 

 

 

■ 心疾患は、症状が出てきた時点では、すでにかなり進行していることも多い病気です。

 

 

 

 

 

◆◆ 心臓病と診断された場合、たとえ症状がなくても、定期的な検査(レントゲン・心臓超音波検査)を行うことが大切です。

 

 

■ 「何も起きていない今」を確認することが、その子の命を守ることにつながります。

 

 

 

 

 

獣医師 土屋優希哉

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