【こんな症例も治りますシリーズ 804】『 ワンちゃんの 左眼を、まぶしそう 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の角膜変性症の右目です。

■ 黒目の白い部分が病気の部位です。

 

参照サイト:

https://00m.in/iOCfk

 

★ 【眼科症例】左眼の角膜結晶沈着と高脂血症の関連性: 犬の角膜変性症における診断と治療のポイントを説明します。

 

 

犬 8歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 左眼を、まぶしそうにする 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

 

 

◆◆ 『立ち上がらない』、『動きたがらない』、『ごはんを食べない』と飼い主様が感じられ、来院されました。

 

 

■ 来院時の身体検査では、左眼に強い羞明が認められました。 そこで、諸検査をしっかりと行うことにしました。

 

 

 

【 眼科検査所見 】

 

 

■ 左眼角膜の表層には、白色の結晶沈着が広範囲に認められました。 角膜の表面などの傷が分かるフルオレセイン染色検査を実施したところ、結晶沈着付近の角膜にフルオレセイン陽性域があり、ごく軽度な角膜上皮の欠損(傷)を併発していることが確認されました。

 

 

 

【 血液検査所見 】

 

 

■ 血液検査では、著明な高脂血症(特にコレステロールや中性脂肪の高値)が認められました。

 

 

■ 補足解説 :

① 角膜に変性沈着が見られる疾患には、遺伝性の角膜ジストロフィーと、炎症や全身疾患に続発する角膜変性症があります。

 

 

② 角膜変性症は必ずしも全身疾患を伴うわけではありませんが、高脂血症などの全身疾患が素因となるケースも多く見られます。

 

 

③ 本症例では高脂血症という所見が確認されたため、この全身性の異常が眼の異常を引き起こした重要な素因であると強く疑われました。

 

 

 

 

【  鑑別診断 】

 

 

① 全身疾患と局所炎症の否定をします。

 

 

② 本症例の羞明(痛み)と結晶沈着から、以下の疾患を鑑別診断リストに挙げ、診断を詰めるアプローチを取りました。

 

 

③ 角膜変性症(続発性): 羞明と角膜欠損があり、高脂血症という素因も確認されたことから、最も強く疑われます。

 

 

④ 角膜ジストロフィー(一次性): 遺伝性で通常痛み(羞明)を伴いにくく、また全身疾患の関与が薄いことから、本症例では否定的に扱われます。

 

 

⑤ 感染性角膜炎:羞明と角膜欠損があるため、二次的な細菌感染を完全に否定する必要がありました。

 

 

 

■ 治療方針を決定する上で、二次的な細菌感染の有無は極めて重要であるため、角膜スワブ培養検査を外部機関に提出し、感染性の角膜炎を除外診断しました。

 

 

 

【 治療 】

 

 

■ 治療: 急性症状の緩和と素因へのアプローチ

 

 

■ 緊急を要する急性的な羞明と角膜の欠損を速やかに改善させるとともに、素因である高脂血症の管理に着手しました。

 

 

 

【 現場での治療判断と処置 】

 

 

① 角膜保護(判断の速さ):  羞明と痛みは動物にとって大きな苦痛です。

 

■ この苦痛を速やかに解消し、角膜の治癒を促すため、物理的な刺激から眼球を守る目的でコンタクトレンズ(治療用バンデージ)の装着を実施しました。

 

 

② 局所治療(理由づけ):  二次的な細菌感染の可能性を考慮し、抗生剤点眼薬を処方しました。さらに角膜上皮の修復と潤いを保つ目的で、保湿点眼薬も併用しました。

 

■ 同時に、素因である高脂血症については、食事指導など内科的な管理を開始しました。

 

 

 

 

【 経過 】

 

 

■ 劇的な症状の改善

 

 

■ 治療開始の翌日には、飼い主様より羞明が完全になくなったとの報告がありました。

 

 

■ コンタクトレンズの装着と集中的な点眼治療により、角膜の欠損部位が速やかに上皮化し、眼の痛みが解消されたと考えられます。

 

 

■ 後日、提出していた角膜スワブ培養の結果は陰性であり、感染性の重篤な角膜炎ではないことが確定しました。

 

 

■ その後も全身的な高脂血症の管理を継続しながら、点眼治療を進め、角膜の状態は安定し、結晶沈着による視覚への影響も認められていません。

 

 

 

 

【  結果とまとめ 】

 

 

■ 飼い主様への気づきと来院の目安

 

 

■ 本症例は、高齢犬の眼の異常が、『 全身的な異常(高脂血症) 』と深く関連していた可能性が高いことを示唆するケースです。

 

 

 

■■ 同じ症状の飼い主様への気づき

 

 

① 羞明は痛みのサイン:  犬や猫がまぶしそうにしたり、片眼を閉じたりする『 羞明 』は、角膜の傷や炎症による痛みのサインです。 速やかな角膜保護が必要な状態ですので、放置せず、すぐに受診が必要です。

 

 

② 眼科疾患は全身疾患の窓:  角膜に白い沈着(結晶沈着)が見られた場合、それは角膜変性症である可能性があります。 この変性症は必ずしも全身疾患によるものではありませんが、高脂血症やホルモン疾患といった全身の病気が隠れていないか、眼科検査と同時に全身的な血液検査を行うことが、根本的な原因治療につながります。

 

 

 

 

【 来院の目安 】

 

 

■■ 犬や猫が目を気にする仕草(頻繁な瞬き、涙が多い、眼を閉じる)を見せたり、角膜に白い沈着が確認されたりした場合は、早期に動物病院を受診してください。 眼科専門医による診断と、全身的な素因の検査を並行して行うことが、再発を防ぎ、動物の生活の質(QOL)を保つ上で非常に重要です。

 

 

 

獣医師  増田正樹

 

 

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