【こんな症例も治りますシリーズ 786】『 ワンちゃんの アジソン病による脱力症状と腎機能 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、副腎の位置を示しています。

◆ 副腎は腎臓の前方(黄色い部分)にあり、ステロイドを生成します。

 

 

参照サイト:

https://00m.in/RLwxQ

 

 

犬 トイプードル 8歳 オス(去勢手術済み)

 

 

 

【 立ち上がれず、食欲不振 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

 

 

◆◆ 『立ち上がらない』、『動きたがらない』、『ごはんを食べない』と飼い主様が感じられ、来院されました。

 

 

■ 他院にて、脊椎疾患の治療中ということでした。 そういった可能性も考慮しつつ、全身の精査を開始しました。

 

 

 

 

 

◆◆◆ 血液検査でわかった異常

 

 

 

・ 腎機能の異常 : BUN、クレアチニン上昇

 

・ 電解質異常  : 低ナトリウム、高カリウム

 

 

・ ストレスパターンが見られない

 

 

 

 

 

■■ ここで重要なのが『 ストレスパターン 』です。

 

 

 

 

■ 通常、体に強いストレスがかかると副腎からコルチゾールが分泌され、白血球像に変化が出ます(好中球の増加、リンパ球や好酸球の減少など)。

 

 

 

 

■ しかし、今回の症例ではこの変化が見られませんでした。 これは副腎皮質ホルモンが不足しているアジソン病(副腎皮質機能低下症)の特徴的な所見です。

 

 

 

 

■ この時点でアジソン病の可能性が高まり、ACTH刺激試験を実施しました。結果、ポストコルチゾールが低値で診断が確定しました。

 

 

 

 

 

◆◆◆ 治療と劇的な改善

 

 

 

・ ステロイド補充療法の開始

・ フルドロコルチゾン(フロリネフ®)によるミネラルコルチコイド補充

 

 

 

■ 治療開始から3日後には見違えるほど元気を取り戻し、立ち上がれるようになりました。

 

 

 

■ 腎機能の異常値(BUN・クレアチニン)や、電解質(ミネラル成分)の乱れも正常化しました。

 

 

 

 

 

◆◆◆ なぜアジソン病で腎障害が起きるのか?

 

 

◆ アジソン病では、アルドステロン不足により血圧低下・循環血液量減少(低血容量)が起きます。 これにより腎臓の血流が低下し、腎前性の腎障害(prerenal azotemia)を起こします。

 

 

 

◆ また、副腎ホルモン不足のために尿の濃縮力が低下し、脱水が進んでも尿比重が低下するという特徴があります。

 

 

 

 

 

 

◆ 適切な輸液とホルモン補充により循環血流が回復すると、腎機能障害も改善するのです。

 

 

 

 

 

◆◆◆ 飼主様へのお願い(注意喚起)

 

 

 

・ 『食欲不振』、『ぐったり』、『立ち上がれない』という症状は多くの病気で見られます。

 

 

・ ただし、低ナトリウム・高カリウムの電解質異常に加え、ストレスパターンが見られない場合には、アジソン病を強く疑う必要があります。

 

 

・ 確定診断にはACTH刺激試験が必須です。

 

 

・ 適切なホルモン補充により、腎障害も含めて速やかに改善する可能性があります。

 

 

 

■ 気になる方は、詳しい獣医師にお尋ねください。

 

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

 

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