【こんな症例も治りますシリーズ 770】 『 ハムスターの頬袋脱出と腫瘤切除 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、ハムスターの『頬袋脱』の手術前後の姿です。

◆ 左は、頬袋が脱出した姿で、根元は黄色矢印の先端です。

◆ 右は、手術で摘出した後の姿です。 手術で縫合した部分を黄色矢印の先端に示します。

 

 

ハムスター ゴールデン 2歳 オス(未去勢手術)

 

 

 

【 左頬袋が脱出! 】 とのことで来院されたハムスターちゃんです。

 

 

 

◆◆ 飼い主様より『 左の頬袋が外に飛び出してしまった 』との訴えで来院されました。

 

 

■ 頬袋の内側にはしこりが存在し、一般的な脱出とは異なる印象でした。

 

 

 

 

★★ なぜ頬袋脱出するの?

 

 

■ ハムスターの頬袋は、食物を一時的に貯めたり運搬したりする役割を持つ器官です 。

以下のような要因で、頬袋が脱出することがあります:

 

 

•  異物の混入(粗大な種子・床材・ゴミなど)

•  頬袋への過度な圧迫(急いで詰め込むなど)

•  炎症や咬傷による組織傷害

•  しこり(腫瘤)が原因で正常な収納が妨げられることもあるんです 。

 

 

 

■■ 臨床診察結果は、頬袋脱出 + 腫瘤を確認しました。

 

 

■ 下顎部に脱出した頬袋を診ると、内部に固いしこり(腫瘤)が存在。

 

 

■ これは単なる脱出ではなく、腫瘍性変化も考慮した対応が必要でした。 しかし、ハムスターの頬袋が脱出して反転すると、肉眼的に『 シコリ 』と思われる形態の部分が現れる事が多いです。

 

 

 

★★ 治療方針: 再配置 or 切除・固定?

 

 

■ 文献によると、軽度の脱出であれば、**元に戻して固定(stay sutures)**することで再発防止する方法もあります 。

しかし、腫瘤を伴い再発リスクが高い場合は、切除術による治療が望ましいとされています 。

 

 

今回のケースでは、腫瘤を含めた頬袋の切除と固定処置を行いました。

 

 

 

 

■ 術式のポイント

 

 

•  全身麻酔下で脱出した頬袋を確認・切除

•  出血対策を徹底しつつ、安全かつ丁寧に腫瘤部を切除

•  尻尾側に強く固定することで再脱出を防止

•  術後は順調に回復し、問題なく食事も再開されました。

 

 

 

 

◆◆ 術後の経過・アドバイス

 

 

•  ハムスターは頬袋を使ってエサを運ぶ習性があるため、術後の食事には工夫が必要です。 柔らかいペレットやミルクなど、負担の少ない栄養提供を工夫しましょう。

•  ケージ内の床材や食材の種類にも注意。詰まりやすいアイテムは使用を控え、口まわりの清潔も心がけてください。

 

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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