【こんな症例も治りますシリーズ 754】『 犬の血液まじりの\治りにくいタイプの肛門腺炎/ 』も適切な診断と治療で治します

 

犬 サモエド犬 4歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 肛門腺を絞っていたら、肛門腺液のなかに血が出て困った 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ 飼主様にお聞きすると、普段から肛門腺分泌液が溜まりやすく、定期的に絞っていたそうです。 いつものように肛門腺を絞ると血液交じりの膿が出てきました。

 

 

 

■ そこで早々に飼主様がワンちゃんをお連れになられたのですが、このタイプの肛門腺炎は、治療のタイミングが遅れると治りにくいパターンに入り込みます。

 

 

 

 

◆◆◆ 治りにくいパターンへの道程とは、次の通りです。

 

 

 

① 肛門腺の分泌物が溜まり易いワンちゃん。

 

 

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② ワンちゃんが、お尻を床などに擦る頻度が多い。

 

 

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③ しかし、肛門腺分泌物が簡単に出ない。

 

 

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④ 肛門周囲が擦れて、バイキンが肛門腺に入りやすい。

 

 

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⑤ 肛門腺化膿で、重度のなかなか治りにくいタイプになってくる。

 

 

という流れです。 断ち切りたいですね。 この流れを。

 

 

 

 

■ 肛門腺からの出血は、ほとんどが肛門腺の中に\バイキン/が入り、炎症が起こる『 化膿性肛門腺炎 』の可能性が高いです。

 

 

 

 

■■■ 治りにくい化膿性肛門腺炎には、抗生物質が効かなくなる多剤耐性菌が原因の事も。

 

 

◆ この化膿性肛門腺炎の『 多剤耐性菌の上位5菌種 』をお伝えします。

 

 

1) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) – 特にMRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) : 出現率 ⇒ 約15―25%

 

 

2) 大腸菌 (Escherichia coli) : 出現率 ⇒ 約10―20%

 

 

3) 緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) : 出現率 ⇒ 約8―15%

 

 

4) コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (Coagulase-negative Staphylococci) : 出現率 ⇒ 約5―12%

 

 

5) プロテウス属菌 (Proteus spp.) : 出現率 ⇒ 約5―10%

 

 

(研究データによっても、菌種と出現率が異なります事を、お伝えしておきます。)

 

 

 

 

 

◆◆ このワンちゃんの話に戻りましょう。

 

 

■ 化膿性肛門腺炎になりますと、お尻を気にしたり、肛門腺の臭いが強くなったりといった症状が出ます。

 

 

■ さらに、気づくのが遅くなり、炎症が強くなると、肛門腺の出口が詰まり破裂することがあります。

 

 

■ 今回は早期治療を始められたため、肛門腺破裂にならずに済みました。

 

 

 

★★★ 『大型犬は、小型犬よりも肛門腺が貯まりにくい』、という俗説がありますが、『大ウソ』です。 室内飼育の大型犬では、肛門腺炎が多くなりました。 ですから、大型犬でも肛門腺の管理を致しましょう。 当院は、肛門腺炎、肛門腺化膿の再発予防手術を行っております。

 

 

 

 

■ 通常の子では1か月に1回程度の肛門腺絞りを行うことで異常を早期発見できますので、定期的な通院をお勧めいたします。

 

 

 

 

獣医師 冨田 浩平

 

 

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